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シロイルカがマジでかわいいからみんな見てほしい

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海の生き物の中で一番好きなのはクジラです。
タイトルにシロイルカと書いてありますが、イルカはクジラの仲間です。イルカとクジラの違いは大きさだけで、実は同じ生き物です。

以前、「特撮その他、コンテンツ以外の話もできるようになれる人間にならないとなぁ」と思い、ツイキャスでクジラについて1枠ぶん使って語りました。以下のリンクは録画公開のログです。
http://twitcasting.tv/ro_si3/movie/296956469
配信前は、生物学を学んでいるわけでもない、図鑑に書いてあることしか知らない自分が30分も持たせることができるのかと不安でしたが、実際に話してみたらすごく楽しくてコメントの反応もとてもよく、私自身もっとクジラについて知りたいとこの時改めて思いました。


先述の配信でも少し触れたのですが、私はイルカと呼ばれているものの中ではシロイルカが一番好きです。
今回はシロイルカの魅力について語っていきます。

・頭の形が独特



シロイルカは一般的にイルカと聞いて連想する種、つまり体が黒っぽいイルカと比べて頭の形に特徴があります。
マッコウクジラのように頭が出っ張っているのです。
これはメロンという器官で、ハクジラの仲間はみんなこれを持っています。
ハクジラの仲間は超音波を使うエコーロケーションと呼ばれる手段を使って海の中で生活しているのですが、メロンはエコーロケーションを行うために必要な器官です。

また、そもそもの顔の作りが笑っているように見えて可愛いんです。
他のイルカと比べて口の先があまり尖っていないので、顔の印象が違います。


・やわらかい



シロイルカはメロンが大きく、しかも自分の意思で変形させることが可能で、水族館のショーなんかではその様子を見せるパフォーマンスもあります。
しかもこのメロン、変形自在ということもありめちゃくちゃ柔らかくて、Youtubeで動画を検索するとその様子を見ることができます。
また、メロンに限らずシロイルカは体全体が脂肪に包まれており、とても柔らかいです。
シロイルカは北極圏で生活しており、沢山の氷で傷ついてしまう身体を保護するため、また寒さに耐えるために15センチほどの脂肪の層に身体を包んでいます。

私のイチオシはこの動画、



特にこの瞬間が大好きです。



シロイルカが水槽のガラスに顔をくっつけることによってメロンが変形していることがわかります。この様子がとてもかわいい...!

ただ、少し心配なのが、この動画に登場するシロイルカはやたらと人間に向かって威嚇している様子が多いことです。



イルカが人間などに向かって突然大きく口を開けるのは、「これ以上近寄るな!」という威嚇の意味があるとされています。
このYoutube動画はいくつかの動画を編集してまとめているため、この動画のシロイルカが全て同一個体かどうかはわかりませんが、これだけ頻繁に威嚇の様子が収められているということは、水族館で生活する上で結構なストレスがかかっているのではないか、と心配してしまいます。
しかしネット上では(全く別の水族館での話ですが)こんな記述もありました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1112723676
>暇を持て余したイルカたちが観客を驚かせて楽しんでいることがわかりました。ただ静かに見ているだけの観客は、
>イルカたちにとってはつまらない存在だったのです。

クジラの仲間は好奇心旺盛で人間に優しいため、この記事に書いてあることも合っているかもしれませんが、真相は不明です。
そもそもこの投稿自体が古く、元のソースが削除されているため現在は確認ができない状態です。
自分でもある程度の根拠に基づき、自分なりの見解を語れるくらいの知識と思考力が欲しいものです...。


・大きい

シロイルカは、全長5メートルほどと、イルカと呼ばれている種の中では身体が大きいです。
この「そこそこの大きさ」にも個人的には可愛らしさを感じます。
元々全身が真っ白という膨張色で、なおかつ身体が大きく、更に頭の形が丸っこく、全身が脂肪に包まれているため、ふわふわして優しいような印象があります。



生まれたばかりの赤ちゃんは1.2〜1.8メートルととても小さいです。親子仲良く泳いでいる様子に癒されます。


+++

以上が私が個人的にシロイルカに感じている萌えポイントでした。
他にも、野生のシロイルカは春になると川に集まり、冬の間に氷で傷つきボロボロになった肌を脱皮する...といった行為に、健気に一生懸命「生きる」という概念を強く感じ、当たり前だけどただかわいいだけじゃないんだよなぁ...と感慨深くなったり、
ホッキョクグマなど天敵を欺くために白い身体をしているのですが、実際にシロイルカの生存率はとても高いことを知ってとても安心したり、
その割に子供はかなり黒っぽい身体をしており、生まれてから10年ほどかけてやっと白い身体になるのは、大丈夫なのか?幼い子供こそ安全な白い身体であるべきでは?と心配になったり、
水中に潜ってしまったばかりに、大量の流氷に閉じ込められて顔を出すことができず死んでしまう個体もいるという事実を知ってとても悲しくなったり...等
まだまだ語りたいことはあるのですが、自分の知識不足ということもあり、今回はこの辺りに留めておきたいと思います。


飼育されているシロイルカは現在、日本では鴨川シーワールド、八景島シーパラダイス、島根県立しまね海洋館AQUAS、名古屋港水族館の四箇所で会うことができます。
どの水族館もショーをやっていて、柔らかい頭に実際に触れたりといった体験もできるはずです。
私は東北に住んでいるため、なかなか行くのが難しいのですが、国内なので実現不可能な話ではないですし、いつかお金を貯めてシロイルカに会ってみたいものです。

更に、つい最近のニュースなのですが、私の実家のある北海道の湖にシロイルカが迷い込んだようです。
北極のベルーガ、北海道でひとりぼっち 遊び相手は漁師:朝日新聞デジタル

このシロイルカは現在一般人が会いに行くことは許されていないそうで、ちょっと残念にも思ったのですが、
もし仮に許可されていたら、ストレスがかかってしまったり合わない食べ物を与えられたりして大変なことになるかもしれないですし...とても正しい判断と思われます。

また、シロイルカは全身が白という大きな特徴があり、水族館の人気者ということもあってか、立体物もそこそこ制作されています。
その中で、特に私がいつか手に入れたい二つを紹介します。

「ActivePillow水夢くん シロイルカ」



全長1.2メートルなので、シロイルカの子供と大体同じくらいの大きさですね(先述の通り、シロイルカの子供は真っ白ではないですが...)
私はシロイルカの魅力を知ったその時から、その柔らかい身体に触れたい、抱きしめたい...あわよくば抱きしめながら寝たい と思っているのですが、
イルカ・クジラは普段水中で生活しているため、長時間陸上にいると自重で肺が潰れて死んでしまいます。また、肌が乾いて火傷のような状態になってしまいます。
なので私のその夢はシロイルカがシロイルカである限り永遠に叶わないのですが、抱き枕だったら感触こそ違えど、思う存分愛でられるし安眠できるのではないでしょうか。
というかこの抱き枕、シロイルカはグレーも販売されているので、かなり"わかっているな"と思います。


「アニア シロイルカ」



こちらはタカラトミーが出している動物のリアルフィギュアシリーズです。

日本製かつ、子供向けの商品なのに、こういうグッズにありがりな「ダメな方向の"媚び"」がほとんど見られず、大まかな印象はかなり実物に忠実なところが好感度が高いです。
特徴的な歯までしっかりと造形されていますね。
また、「それぞれの動物の特徴を直感的にとらえる」というコンセプトのアニアで、頭がプニプニしているという最大の特徴をもつシロイルカを立体化した上で、プラスチック製という商品の特性上その特徴を再現できないため、他の海獣同様"口の開閉と尻尾の可動"に留めている点はかなり割り切った決断だなぁ...と思いました。
この「アニア」シリーズ、一体600円と怪獣ソフビ程度のお手軽な値段で入手でき、かなり出来が良くラインナップも豊富...これは一度手を出してしまうと大変なことになるやつですね。すごく欲しいんですけども。

+++

以上、今回はシロイルカのお話でした。
動物について調べたり、そこで得た知識を人に紹介したりするのはとても楽しいので、これからも続けていきたいです。
また、ツイキャスの時に気付いたのですが、創作物である特定のコンテンツに比べて実在する動物の方があまり相手を選ばず語れますし、その対象について詳しく知らない、今まで興味を向けていなかった人も食いついてくれますね。
コンテンツの話は、どうしてもその作品を見ていることが前提となってしまうのが実は難しいところです(もっと語るスキルがあれば未見の人にもある程度面白く説明することはできるのでしょうが...)。
いろんなジャンルの話を誰が聞いたり読んでも面白く感じられるようにプレゼンできるようになるのは今後の課題だなぁと思いました。

シロイルカはどんな仕草をしていても楽しそうでかわいくて癒されるので、これを読んで興味を持ってくださった方は是非Youtube等で動画を探してみてください。
動画を見て、水族館で飼育されている個体と野生の個体の違いなんかを探すのも楽しいですよ。

特撮雑誌「宇宙船」を20年前と現在で比較してみた

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特撮というジャンルが好きな人でしたら、一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
SF・特撮マガジン「宇宙船」。
もとはソノシート絵本など子供向けのアニメ・特撮書籍を出していた朝日ソノラマが1980年に創刊したのですが、2007年に朝日ソノラマが解散してからはホビージャパンが権利を譲り受け、現在に至ります。
長い歴史の中で何度かの休刊と刊行ペースの変更がありながらも今もなお続いているということは、この雑誌がそれだけ多くの読者に愛され、支えられているということなのでしょう。

私は特撮系の書籍なんかは特に、その作品が公開されていた当時の様子を知ることができるので、昔出たものを読むととてもワクワクします。
雑誌はその時代の空気感を当時の形そのままで知ることができる貴重な資料だと思っているので、ブックオフで宇宙船のバックナンバーを買うのがささやかな楽しみです。

しかし、特撮と言っても実はジャンルが更に細分化されているため、分類上同じ特撮作品でも全く知らないものもある、というのは特撮あるあるでしょう(中には全て網羅している素晴らしい方も沢山いらっしゃいますが...)。
私なんかはまさにそれで、怪獣映画が好きであるため、つい最近までの怪獣映画氷河期はたまに宇宙船を立ち読みする程度で、全く買っていませんでした。
そのため、バックナンバーを持っているといっても非情に時代に偏りがあります。

バックナンバーは、とりあえず自分の好きな作品が特集されていたら買う、といったようにしているのですが、一番好きな怪獣映画「ガメラ2」が表紙だからという理由で買ったvol.77 1996年夏号がちょうど今から20年前に出されたものだということに気づき、どうせならこの雑誌が20年でどのように変わったのか比較したら面白いんじゃないか、と思い、vol.153 2016年夏号を購入しました。

ということで今回は、宇宙船vol.77 1996年夏号とvol.153 2016年夏号の比較、同時に特撮というジャンルがこの20年でどう変化したかということを紹介していきます。

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1.表紙デザイン



タイトルロゴが筆文字からタイポグラフィに変わり、サイズも表紙の幅いっぱいに配置できるほど大きなものになっています。
また、表紙に使っているビジュアルの全体を見せるためか、vol.153はロゴを半透明にする工夫がなされています。
更に、vol.153のほうが表紙の情報量が多く、この本で扱っている作品が表紙を見ただけでほぼ全てわかるようになっている上、表紙の「仮面ライダーゴーストムゲン魂」にかけたキャッチコピーが大きく配置されています。



バックナンバーを調べてみたところ、筆文字ロゴから現在のスタイルに変わったのはvol.141 2013年夏号からのようです。
表紙にも大きくRENEWALの文字が書かれており、この号から方針が変わったことが伺えます。
表紙ではヒーローの変身後の姿を扱うことが多かった宇宙船で、リニューアル一発目にキョウリュウジャーの変身前の役者全員を大きく扱ったのは大胆な決断ですね(役者が表紙を飾ること自体はこれが初めてではありません)。

また、更に調べたところ、具体的な号数のタイミングはわかっていませんが、宇宙船のタイトルロゴは何度か変わっていることがわかりました。



1980年の創刊号からvol.45 1988年12月号までの隔月刊だった時期は昭和のマンガのタイトルのような斜めのデザイン
vol.46 1989年2月号からvol.63 1993年冬号の季刊へ移り変わった時期はウルトラマンや仮面ライダーの番組タイトルロゴを連想させるデザイン
vol.64 1993年春号からvol.99 2002年3月号間の再び隔月刊へ移り始めた時期までは筆文字
vol.100 2002年5月号からvol.119 2003年11月号の間はシンプルなゴシック体
vo.120 2008年春号からvol.140 2013年春号までの復刊以降は再び筆文字
vol.141 2013年夏号以降は現在親しまれているロゴ

といった流れになっていました。
ちなみに、vol.150 2015年秋号の表紙では150号記念ということで最初期のロゴが使われています。



閑話休題。

よく見るとvol.153は裏表紙も表紙の延長として使われており、仮面ライダーゴーストに次いでウルトラマンオーブが大々的に扱われていることがわかります。



こういった裏表紙の使い方は、個人的には初めて見ました。しかし、手に取った上で裏も見た人にしかわからないので、従来の雑誌の表紙のように、表紙1に一緒に載せるほうがわかりやすい気もしますが...

vol.77の裏表紙は特撮関連のCDの広告です。雑誌の裏表紙は広告という印象がやはり強いですね。表紙・特集に合わせてガメラのサントラが大きく扱われています。

2.目次



目次はどちらも巻末に掲載されています。
手元にあるので確認したところ、子供向け特撮雑誌である講談社の「テレビマガジン」2016年8月号も目次は巻末にありました。



個人的に雑誌の目次は冒頭にあるほうが馴染みがあるので少し違和感がありますが、よく考えると集英社の「少年ジャンプ」など漫画雑誌も基本的に目次は巻末にありますね。

しかしvol.153はなぜか目次の後に仮面ライダー鎧武の怪人「ロード・バロン」の特写が4ページもあるため、目次が少し探し辛いです。

そしてvol.77とvol.153、注目すべき点は目次のレイアウトの違いです。
vol.153は淡々と機械的にコンテンツを並べているのに対し、vol.77はこの恐ろしいまでの凝ったレイアウト!



カラーページとモノクロページを分けているところもとても特徴的ですが、ページ上半分「P28 ジャイアント・ピーチ」と「P30 4C無法地帯」の間で謎の段落ズレをあえて取り入れ、画面に大きく動きをつけています。
中央に大きく配置されている横書きの「1996 SUMMER」の帯から上下に縦書きの「カラーページ」「モノクロページ」が伸びているのもかなり大胆なデザインというか、なかなか思いつかないし思いついても実行する勇気は私には無いですね...。
その上で雑誌タイトルと号数はページ右端に縦組みで横書きという豪快さ。なんなら「CONTENTS」というこのページが何のページであるかということを示す重要な要素すらも縦組みで配置されています。
更に、空いたスペースにはすかさずモスラとウルトラマンティガを配置という文字通り隙の無さ。
しかし表紙でも紹介されており、本文でもガメラのページの次に特集されているモスラは十分にわかるのですが、だったらもう一つはティガではなく七星闘神ガイファードにすべきだったのでは...?という疑問もわいてしまいますが...。

vol.77の目次はとにかくダイナミックで動きのあるレイアウトをしていて、良い意味でうるさくてゴチャゴチャしているんですよね。そのため、とてもワクワクさせられます。
私は、こう言った「ゴチャゴチャ感」こそがとてもオタク的だと思います。オタクは、沢山のことを知っていて好きなものが沢山あって、物理的な意味でも部屋に沢山の本やグッズ、映像ソフトがあり、それがどんなに整頓されていたとしても「ゴチャゴチャ感」は拭えないということがほとんどではないでしょうか。もしくは、話の展開も部屋の片付けも、オタク的にはとてもシンプルで情報が少ないつもりでも、そうでない人にとっては十分なんだかマニアックで情報が多いと感じられることは珍しくないと思います。
また、特にこの特撮というコンテンツは、本来子供向けに制作されたものを大人が楽しんでいるという構図が前提にあります。そのため、私のような例外もたまにいますが、基本的に多くの特撮マニアは子供のときに特撮を見ていて、そのときの気持ちの延長で大きくなっても特撮を愛しています。
宇宙船vol.77の目次ページからは、そういった子供時代の気持ちを呼び覚ますような「ワクワク感」、おもちゃ箱のような賑やかさが感じられます。


3-1.本文 - 印刷

vol.77はカラー・モノクロ混在でカラーページのほうがやや多く、またモノクロページの中でも白い用紙と黄色い用紙の二種類を使い分けています。





vol.153はフルカラーで、全ページ同じ用紙です。

3-2.本文 - 構成

vol.77はカラーページが限られているということもあってか、冒頭の特集ページでは1作品あたりのページ数がとても少なく、短いページ数でジャンルも制作会社も様々な作品がどんどん紹介されていきます。





そのため、巻頭のカラーページをパラパラめくって流し読みするだけでも、この時期に制作・公開されていた作品の情報を沢山得ることができます。

モノクロページでは編集部による作品レビューや脚本家・監督のインタビュー、作品データベースといった大変ありがたい情報と、ハガキ投稿によって構成された読者参加企画の二種類がメインなのですが、
面白いのは、そういったスタッフのインタビューが載っているのと同じページに読者の投書やイラストが載っているという点です。
いわゆる「読者のおたより」コーナーは先述の黄色いページに集約されているのですが、それとは別に脚本家の伊藤和典さんのインタビューの下に「読者のガメ論」といったコーナーが設けてあったり、



ウルトラマンゼアスの怪獣デザイン画の隣に読者によるウルトラマン語りが載っていたりと、「読者もこの雑誌を作り、特撮を支えている一員」という印象を強く受けるような構成になっています。
また、とにかく文字が多く、カラーページも1ページあたりの写真1枚1枚が小さめのものが沢山載っているため、濃い情報が圧縮されています。

vol.153は巻頭から16ページに渡り仮面ライダーゴーストの特写を5種類掲載し、その後はほとんど役者や監督へのインタビューです。
インタビューは全て見開き1ページ、写真が大きく載っているのでページを開くだけで誰に対するインタビューなのかわかります。



vol.77にもインタビューは沢山ありましたが、文字数があまり多くないものを1ページに何本かまとめたり、逆に何ページも使ったりとフォーマットは統一されていませんでした。
しかしこれは言い換えると、vol.153は見開き1ページでの役者ときどき監督インタビューが多いため、どのページを見ても印象がほとんど変わらず、あまりに大人しすぎると感じるのが正直な感想です。
これは特撮作品そのものにも近いことが言えるかもしれませんし、言ってしまえば個人レベルの好みの問題なのですが、vol.153のページレイアウトは洗練されすぎるが故に雑誌全体のトーンがあまりにも統一されすぎています。私はもっとカオスな感じや目次の話題でも触れたゴチャゴチャ・ワクワク感、泥臭さといったものを求めてしまうので、寂しく感じてしまいました。

更に気になったのは、vol.77は先述のとおり短いページ数でテンポ良く多くの作品を扱っているのに対し、vol.155は巻頭から実に45ページの間ずっと仮面ライダーゴースト一本でぶっ続け、更には46・47ページは見開きでVシネマ作品の仮面ライダーマッハ/ハート、更にページをめくると仮面ライダーアマゾンズが4ページに渡り紹介されています。
つまり、宇宙船vol.153は、実質51ページに渡り、仮面ライダーのみを扱っています。
そして、52ページから63ページは動物戦隊ジュウオウジャー、64ページから67ページの間は手裏剣戦隊ニンニンジャーを扱っているため、東映の作品だけで雑誌の前半を使っています。
これはvol.77との大きな違いで、vol.77と同じノリで読んだら延々と仮面ライダーの記事が続き、かと思えばいつの間にか戦隊の記事になっているので(ページ構成のカラーが似ているため記事が変わったことに気がつきにくい)、「この号は東映作品しか取り扱ってないのか?」と思ってしまいます。

後半になるとサンダーボルトファンタジーやシン・ゴジラ、貞子vs伽倻子、またX-ファイルやスーパーガール、ゴーストバスターズなど、国内外を問わず特撮作品を幅広く紹介している点はvol.77と変わらず、「SF・特撮マガジン」の名にふさわしいと言えます。

そしておそらくvol.153では仮面ライダーゴーストの次にプッシュしたいのであろう作品がウルトラマンオーブですが、これは広告を含めると16ページ、更にオーブ以外のウルトラマンの記事も含めると22ページです。
実は、仮面ライダーゴーストの特写を除いたページ数が18なので、割り当てられたページ数は実はゴーストとあまり変わらないどころか、むしろオーブのほうが少しだけ多いのです。
にも関わらず、vol.153はウルトラマンオーブの印象はとても薄いです。おそらく制作会社ごとにわかりやすくまとめるといった配慮からこうなったのかと思われますが、これだけ延々と東映作品を扱ってきた上で全体の後半に入ってから初めて紹介されるものを、果たして裏表紙で主張するほど大きな特集と呼んでいいのだろうか?と疑問に思います。
しかし仮面ライダーゴーストは現在TV本編がクライマックスである上、vol.153が発売された時期は劇場版の公開があるために絶好のアピールチャンスであり、更にvol.154が発売される予定の10月にはもう特撮ファンの興味は次回作の仮面ライダーエグゼイド一色であるため、ゴーストを大々的に扱うということ自体は雑誌の作り方としてこれ以上正しいものはありません。
その上、仮面ライダーシリーズは全国で放送されており、ウルトラマンオーブはインターネット配信こそあれど一部の地域では放送されていません。
そういった事実から客観的に考えてみても、仮面ライダーゴーストを45ページに渡り特集し、同じシリーズであるアマゾンズやドライブサーガを一緒に紹介し、制作会社と放送枠が同じスーパー戦隊シリーズを続けて扱うことは間違ったことではないはずです。

しかし、そうなってしまったことにより、vol.77を読んだときに感じたテンポの良さ、間髪入れず様々な作品の情報が入ってくる面白さはvol.153では失われてしまいました。
これにはいくつかの理由が考えられます。

・vol.77はカラー・モノクロ混在であるのに対し、vol.153はフルカラー

vol.77はカラーページの数が限られているため、制作の際は本当にフルカラーで見せたいもの、本当に目立たせたいものの厳選が必要です。
そして、限られたカラーページの中でできるだけ多くの作品を紹介するため、1作品ごとの割り当てられたページ数は少ない上、1ページに詰め込まれている情報はとても多いです。
また、vol.77は特集ごとのまとまりよりもカラーページで扱う作品の数を優先しているため、同じ作品でもインタビューや解説など、ヴィジュアルで見せる必要のないものは何10ページも後のモノクロページに回し、同じ作品でもカラーページで扱うは劇中写真やスチル、最新情報といったヴィジュアル重視のものや優先してアピールしたいものに留めています。
そのためにカラーページでは度々、このような「続きはモノクロページで」といった旨の誘導がされています。制作会社どころか同じ作品でもページが飛び飛びなのです。



つまり、私がvol.77を読んだ時に感じた「次々と短い間隔で紹介作品の変わるワクワク感」は、限られたカラーページの中でいかに多くの作品をカバーするか、といった編集側の工夫によるものだったのです。

それに対しvol.153はオールカラーであるため、vol.77で見られたような節約技めいた工夫の必要はありません。序盤の特集にどれだけ尺をとっても、文字が記事の半分以上を占めるインタビューをカラーページにおいても、カラーページの無駄遣いにはならないためです。
なのでわざわざ同じ作品でもページを飛び飛びにする必要な全くなく、制作会社やシリーズごとにまとめたほうが違和感がないためにこのような構成となっています。

・そもそもの判型が写真に向いている

宇宙船はvol.77もvol.153もA4変形とサイズが大変大きく、こういった判型の雑誌はヴィジュアルで見せることに向いています。
それは特撮以外のジャンルでも一緒です。私は高校生のとき、特撮関係ではなく好きなバンドの話をする仲間とTwitterで交流しており、新曲がリリースされると音楽関係の雑誌を購入していました。
音楽雑誌は特撮雑誌よりも種類があるのですが、当時のフォロワーが「PATi-PATiはいつも写真が大きくて多いので嬉しい」とツイートしていたのを覚えています。



PATi-PATiもA4ワイドというとても大きい判型なので、写真を効果的に見せるのにとても向いているということがわかります。

また、単純に20年前と比べて現在のほうがカメラの解像度も印刷の技術も上がったため、大きな写真をより美しく見せることができます。
そのためにvol.153のほうが1ページあたりの写真が大きく、そうなることによって同じくらいの情報量でも1作品あたりの割り当てられるページ数が多くなるのも納得がいきます。


・vol.153はvol.77に比べると読者投稿欄が極端に少ない

これは主に「vol.153のページレイアウトは洗練されすぎるが故に雑誌全体のカラーがあまりにも統一されすぎている」といった点に関係があります。
vol.77では数え切れないほどのページ数があり、度々他の記事の隅にも登場しているためなかなか存在感のあった読者の投書が、vol.155ではなんとたったの2ページしかありません。
その上、読者投稿欄はあくまで読者投稿欄として別枠で用意された範囲でやっているのみで、他の記事と同じページに出張していたり、製作陣と視聴者の意見を照らし合わせて読んだり...という構成にはなっていません。
そもそも、vol.77は文章での投書の掲載がとても多く、他にも読者の作った立体造形物やイラストなど、様々なものを扱っていたのですが、vol.153では読者からの投書はイラストのみの掲載となっています。
これは前述の、雑誌全体がヴィジュアルで見せることに特化しているという特徴を考え、イラスト一本に絞ったのかもしれません。


・それぞれの時代で特撮というジャンルの流れが全く違う

vol.77の発売された1996年は、仮面ライダーシリーズが完全にストップしており、ガメラ2の公開と平成モスラの制作、といったように国産怪獣映画が近年に比べて活発な時代だったことが伺えます。
しかし、TVでは七星闘神ガイファード、超光戦士シャンゼリオン、ビーファイターカブト、激走戦隊カーレンジャーが放送されており、ヒーロー特撮はむしろ今より多い時代でした。
その中でもなお怪獣映画であるガメラ2とモスラが大々的に扱われているのは、当時は今よりも怪獣映画に興味を向ける人間が多かったということなのでしょうか。

vol.153の発売された時期はシン・ゴジラがギリギリ公開前でした。またシン・ゴジラ自体がかなり徹底した秘密主義で、公開前はファンから不満の声が出るほどの露出の少なさであったということを考慮しても、vol.153でシン・ゴジラは4ページでとてもアッサリ紹介されていて、思わず「これだけ?!」と言ってしまったほどです。樋口真嗣監督のインタビューはかなり突っ込んだところまで語られており、読み応えはあるのですが、正直な話、雑誌全体で見るといわゆる「扱いが悪い」という感想を抱きます。

更に10月に発売されるvol.154は、表紙画像こそまだ公開されていないものの、公式サイトでは「『仮面ライダーエグゼイド』大特集号!!」と発表されています。
この20年で特撮というジャンルの流れが大きく変わり、編集部の方針もとにかく仮面ライダーを最優先しよう!といったように変わった、つまりそれだけの需要があるということなので、私が想像している以上にシリーズごとのファンの人口が違う、ということなのでしょうか(勿論私も仮面ライダーエグゼイドの放送を今から心待ちにしているほどには仮面ライダーが好きですが...)。


3-3.本文 - コンテンツ

先ほどまでは、本文の中でもあくまで雑誌の構成に目を向けて語っていました。
ここからは、具体的な内容、記事で主張していることなど、コンテンツにフォーカスして更に細かく語っていきます。

まず、vol.153の最大の特徴が「特写」。この号に限らず、近年の宇宙船はこれを一つの売りにしている印象があります。
先述の通り、撮影・印刷技術が大幅に上がったために実現できている企画ですね。



本編撮影に使用されたスーツを様々なポーズ・角度で撮っているため、デザインの細部や使用素材の質感が手に取るようにわかります。
イラストやコスプレ造形、フィギュア制作などの二次創作活動をされている方にとってはとても役立つ資料ですし、そうでなくとも純粋に美しく、見ているだけでとても楽しいです。
仮面ライダーゴーストムゲン魂のヘルメットは綺麗に処理された前後の分割線までうっすら見えるほどです。
また、こういった特撮作品で使用されるヒーローのスーツは、基本的に戦闘シーンで活躍するため、映像の中で素早く動いている印象が強いです。
そういったスーツを、大きな写真にブレもなく収められている状態でじっくり見るという行為自体が新鮮で、不思議な感覚があります。

そして同じくヴィジュアルで見せているのがインタビュー記事ですが、個人的にはこれに少し疑問があります。
現行作品の役者へのインタビューを載せている特撮雑誌は宇宙船以外にも東映ヒーローMAX、HERO VISION、スーパーヒーロータイムがあり、現在は休刊していますが特撮ニュータイプというものも数年前まではありました。
国民的シリーズ「仮面ライダー」の俳優ともなると雑誌だけでも数え切れないほどのインタビューを1年間で受け、更に劇場パンフレットや公式ガイドブック等にもインタビューやグラビア写真が載るでしょう。舞台挨拶やイベント、ブログやSNS、映像特典などでも作品や役について語る機会はあります。
つまり、役者のインタビューやグラビア写真は他の雑誌でも見る機会はいくらでもあるのに、わざわざ宇宙船でもやる意味が私にはあまり感じられません。
そもそも「HERO VISION」というタイトルの時点で俳優を中心に扱っていることがわかる雑誌がある上で宇宙船も似たことをやっているのに違和感があります。

俳優が好きで特撮を見ている人や、雑誌全体で俳優を推すこと自体は何も問題ないことですし、それだけ需要があるということなのですが、他の雑誌も散々やっているのと同じことを宇宙船のメインコンテンツにしてしまうのは本当にそれでいいのかと思います。
インタビューの内容も、撮影の時にどんなことがあったとか、どんな心境で演じているとか、特定のエピソードについての質問だとか、あまり突っ込んだものはなく、悪い言い方をすれば誰でもできる質問ばかりです。
そもそも、役者として魅力があることと、インタビューで面白いことが語れるかどうかということは全く別で(もちろんインタビュアーの技量によるところも大きいですが)、人気作品の役者にインタビューをしまくる=面白い記事ができる とは限らないはずなので、その辺りが少し甘いかなぁと感じました。

また、全ページカラー印刷であるというのもvol.153の特徴ですが、これは別にカラーじゃなくてもいいだろうというページがそこそこあります。実はvol.153はvol.77の二倍近くの値段なのですが、カラーじゃなくてもいいページはモノクロにして従来のカラー・モノクロ混在印刷とし、その分値段をもう少し下げられないかと思います。

vol.77の特徴は、先ほども少し触れましたが読者投稿欄の多さ、それも文章での投書がとても多い点です。この辺りはかつて刊行されていたコンテンツ系雑誌「月刊OUT」に通ずるものがあります。
また、作品の感想や考察といった"語り"に加え、自主制作映画の宣伝や同人サークルのメンバー募集、中古グッズの買取情報などといったものも見られ、作品そのものについてだけではなく、当時のオタク達がどんな活動をしていたのか、リアルタイムではどのような反応があったのかといったことが文字通り手に取るようにわかります。






こういった生きた情報が載っているほうが読んでいて楽しいですし、何年経っても資料として十分な価値を発揮するので、個人的には復活してほしいです。
しかし、そもそも現在はインターネット掲示板やSNSがほぼその役割を果たしており、雑誌というメディアの役割が変わったということも考えられるので、これからは他の雑誌でもそういった読者の参加する枠はどんどん少なくなっていくのかもしれません。



+++

まとめ

同じ雑誌でも20年経つとここまで大きく変わるのか、という驚きがまずありました。
長年特撮ファンをやっている方と話すと、「昔の宇宙船のノリが恋しい」「近年すごく内容が変わった」といった意見はよく聞きますし、自分も数冊読んで「なんか違うなぁ」とは思っていたのですが、実際に分析してみると1万字を超えるほど語れる内容になるとは思いませんでした。
私自身は宇宙船のバックナンバー(主に90年代〜00年代前半)を数冊所持している程度で、特撮作品自体もそこまで多くのものを見ているわけではないので、詳しい方が語るともっと沢山の発見があると思われます。

こうして比べてみても、やはり私は今回でいうvol.77、昔の宇宙船のほうが好きです。それは私が仮面ライダーゴーストよりもガメラ2が好きということを差し引いても言えることです。
やはり、何度も触れていますがページをめくるたび得ることのできるワクワク感が段違いで、とにかくその情報の濃さに圧倒されるからです。しかも、情報量が多く濃いからといって胃もたれすることもなく、ちょうど良いバランスで楽しむことができる点が素晴らしいです。

また、私は作品をひとつ観賞したら自分なりに考えた後は必ずSNSや掲示板を見て、同じ作品を見た人がいないか探します。他の人の感想や考察を読むことがとても好きで、そういったものを見るとまた作品をもう一度見たくなるからです。私にとって、作品を観賞するという行為は他人の感想を読むところまでがセットなのです。
そういった点でも、日本全国にいる読者の感想や持論を毎月読むことのできたかつての宇宙船は素晴らしいです。
現在は私がそうしているようにインターネットがその役割を果たしているのですが、ネット上のデータはいつ消えるかわからないですし、ノイズが多いこともしばしばあります。
雑誌への投稿は編集部を通したものだけが載っていますし、本の形をしていれば資料として保管し、いつでも簡単に見ることができるので、インターネットでの交流がすっかり定着した現代でも、文章の投稿欄は復活してほしいです。

そして投書の扱いが無くなったもう一つの理由として考えられるのは、おそらくTwitterの普及率が爆発的に上がったことにより、主に10代後半〜20代前半の若者が長文離れしてしまったことが考えられます。
Twitterの1ツイートは140文字までですが、毎回毎回140文字びっしり書くユーザーはあまりいないですし、140文字すら「長い」と感じる人は少なくありません。
140文字を読んで長いと感じるということは、140文字を自分で書くことはあまりないということです。
つまり、140文字以下のツイートでも作品の感想は共有できるので、かつての宇宙船読者のようにじっくり考えたりあれこれ語ったり...といった見方をしている読者が減っているのではないでしょうか。
私も同年代の知人に考察などを話すと、「長い」「そこまで考えるのは深読みしすぎ」と言われることがたまにあります。
勿論、中には若い視聴者でもじっくり語るのがとても好きだという人がいるというのも理解しています。自分自身や、Twitterのフォロワーの多くがそれに当てはまるからです。そして、別にTwitterに馴染みのない世代の方でも長々と語ることをしない人だっているはずです。
しかし、大きな流れで見て、長文慣れしていない人やシンプルな感想で済ませる人、作品の表面的な情報だけを受け取って消費してしまう人が多くいるのは事実です。
そういった時代の流れに合わせて雑誌の構成が変わったということは十分に考えられます。
毎年恒例の、新ヒーローのデザインや設定が公開される度にファンが大騒ぎする現象にも同じことが言えますが、昔のほうがよかったというのは思い出補正など抜きに事実であることはとても多いです。
しかし、作っている側は商売でやっているので、メインターゲットの心にどれだけ訴えることができるのか、世の中全体の雰囲気から察するに今はどんなものがマッチしているのか、といったように、同じものでも時代に合わせて形を変えなければ生き残ることはできないため、変わること自体は悪いことではないのではないでしょうか。
(そもそも、当時の価値観で作ったものと現代の価値観で作ったものを自分の主観というひとつの価値観で比較するという行為自体が矛盾してしまうのでは?と今気付きました。楽しかったのでいいのですが...)

また、宇宙船の傾向が変わったからなのかそうでないのか、近年では「特撮秘宝」をはじめとする洋泉社の書籍にかつての宇宙船の雰囲気を感じます。
洋泉社の書籍は、かつての宇宙船よりも更にディープでどこまでも濃く、読むのに一体何日かかるのか想像もつかないほどの情報量があり、貴重な情報もとても多いです。
とても価値のある資料を一般人でもあまり無理なく出すことのできる価格で一般書店で手に入れることができる、という点ではとても素晴らしいです。
しかし少し気になるのは、特撮秘宝は東映作品、特に現行放送のものをほとんど扱っていない印象があり、同じ現行放送や新作でも円谷プロの作品は沢山扱っているので、作品にやや偏りがあるという点です。
また、インターネット上での読者参加企画はあるものの、投書の掲載はしていないため、ほとんどの読者は一方的に情報を受け取るだけという構図になります。
そういった点でもやはり、どんな作品でもバランスよく取り上げ、読者も雑誌を作る一員という意識の感じられた昔の宇宙船は素晴らしかったと思います。

今回は20年という区切りで「宇宙船」たったの2冊の比較でしたが、例えば休刊・復刊のタイミング、季刊と隔月刊が切り替わったタイミング、ロゴが変わったタイミング等で比較してみると、また新しいものが見えるはずです。
そもそも「昔の宇宙船」と表現しましたが、具体的に方針が変わりだしたのはいつからか、vol.77のような編集・構成はいつまでされていたものなのかということもまだわかっていません。
このテーマはまだまだ研究のしがいがあります。またバックナンバーを入手したら、少しずつ調べていきたいです。



怪獣オンリーイベント「Attack Of The Kaiju!」に参加します

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前日の告知となってしまいましたが、明日11/5(土)に大田区産業プラザPio2階にて開催されるイベントに参加します。
初めての同人イベント参加です。同人誌を一冊と、今年の大学祭で配布したフリーペーパーを頒布します。



初めての同人誌では、作品考察を書きました。
シン・ゴジラの劇中世界には円谷英二はいない、ゴジラというコンテンツが存在しないという事実に目を向け、それらの不在により連鎖的に消えてしまう文化や、逆に発達している文化など、あの劇中世界の日本が我々の生きているこの世界の日本とどのように違うのか、といったことを考察しています。
もちろん、庵野総監督はそんなこと考えていない、これは別にあの作品を見る上で大事なことではないということを理解した上で、お遊び的にやってみたものです。

更に今回、特別ゲストとして山形在住のとある怪奇小説作家の先生に短編小説のご寄稿をいただきました。
作家さんの正体は諸事情によりここに書くことはできませんが、普段の名義で参加していただいたので本を開けばわかります。おそらく普段怪奇小説を読まない方でも、近年の特撮関連書籍を集めている方でしたらお名前を見たことはあるのではないでしょうか。
こちらの小説は、もちろんシン・ゴジラに関係のある内容なのですが、なんと舞台は100年前の日本です。映画本編にも登場した品川神社にまつわるお話で、一般的な二次創作作品とは違った角度で楽しめる内容になっています。

またイベント自体は「怪獣オンリーイベント」という名目ですが、一般的なイベントとは違い、様々なジャンルのオンリーイベントを「スキマフェスティバル」という一つの会場で同時開催するという形になっています。
私の参加スペースナンバーは【怪獣03】です。ヤシオリ作戦の防護服を着て一人で参加します。
会場は蒲田ですので、ロケ地巡りがてら是非お立ち寄りくださいませ。

Attack Of The Kaiju! 公式サイト
スキマフェスティバル 公式サイト


あと、おそらく残部は出るはずなのでイベント終了後に通販を受け付けます。
会場に来られない方でもし本が欲しい方がいらっしゃいましたら、少しお待たせすることになりますがそちらをご利用ください。

編集に携わった雑誌「文芸ラジオ第3号」が発売されました

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久しぶりの更新は、編集部みんなで一年間コツコツと作り続けてきた本の宣伝です。


今回は団体の広報誌やフリーペーパーではなく、文芸誌というジャンルの雑誌です。
しかも、全国発売です。
「文芸ラジオ」という雑誌の第3号です。
以下、そもそも文芸ラジオとはどんな雑誌なのか、そして私はどこに携わっているのか、どのページがオススメなのか、など書いていきます。


1.文芸ラジオとは

今回で三冊目になる「文芸ラジオ」は、東北芸術工科大学 芸術学部文芸学科の教授と学生が有志メンバーで制作している文芸誌です。
今のところ年に一冊、5月発売というペースで刊行しており、文芸誌なので小説を中心にエッセイや評論といった文章、また著名人へのインタビューなどを中心に載せています。
小説はプロの作家さんは勿論、文芸学科の学生も執筆しています。
毎号だいたい同じくらいのページ数で、今回は全418ページです。

文芸誌という多くの人にはあまり馴染みのないジャンル、小説や文字だらけで418ページも...というと普段あまり小説を読まない人は敷居の高さを感じてしまうかもしれませんが、文芸ラジオにそういった心配はいりません。
より多くの方に手にとってもらえるよう、企画を考えて作っているので、きっと楽しんでいただけるはずです。

編集部では、教授陣と学生スタッフで毎週編集会議を行なっています。どんな特集を組むか、誰に執筆を依頼したいか、などをどんどんアイデアを出して話し合っています。
また作家さんへの依頼、原稿の管理などは学生スタッフが行っていて、学生執筆者の原稿はどういう方向性のストーリーで行くか、どうやったら更に面白くなるかなどといったことを教授を交えて打ち合わせたり...といったような編集者の仕事を責任を持ってやらせていただいています。
他にはインタビューの依頼や実際の取材なども先生方のご指導のもと、学生が行なっています。
私は文芸ラジオには前号の校正と最終確認の段階から参加していますが、企画の段階から本格的に携わったのは今回が初めてなのでとても思い入れがありますし、協力しあって面白い一冊を作ることができたので、多くの方に読んでいただきたいです。 


2.第3号内容解説

・表紙

今回の表紙はモデルの押切もえさん(と、学生スタッフの飼っている猫のサンちゃん)です。
押切さんは小説家としても活動されており、更に山形県にもご縁があるということで表紙になっていただきました。
去年の学校祭では押切さんに大学に来ていただき、作家・押切もえとしてのトークイベントを開きました。そのときの様子をインタビュー形式で載せています。
学祭で押切さんの実物を初めて見た時は、とにかく体が細くて顔が小さくて驚いたことを覚えています。

そして巻頭の押切さんの写真がどれもすごく可愛くて、個人的には超お気に入りのページです。
特に大学のグラウンドを背景に微笑む押切さんの表情がとても良くて、一枚の写真の中で独特な空気感が完成されています。
いくつになっても可愛くて綺麗でいる、って誰にでもできることではないと思うので、すごいなぁと感動してしまいました。

また、学科のブログに編集長の先生が表紙撮影時の裏話を書いているので、こちらも合わせてお読みください。
http://blog.tuad.ac.jp/tuad_bungei/archives/521

・特集「猫というメディア」

更に今回は「猫というメディア」という特集を組んでいます。
単に「猫」ではなく「猫というメディア」というテーマを設定したのは、今や単なるブームとは言えないほど多くの日本人にとって大きな存在となっている"猫"の、メディア性という部分に着目しようという意図があります。
この特集では、漫画「月詠」でネコミミブームを巻き起こした漫画家の有馬啓太郎先生をはじめとするイラストレーター・漫画家の方々による猫イラストや、猫スポットの取材、猫に関する評論や猫小説、猫漫画などあらゆる方向で"猫のメディア性"を取り上げています。
実のところ私は個人的には犬が圧倒的に好きなので、近年の猫ブームにはあまり乗れていないところがあるのですが、この企画はコンセプトがとても面白いですし、猫という存在の偉大さに改めて気づくことができました。

また、この特集は「猫」というとても身近で、親しみやすい存在がテーマです。そして短編小説やエッセイ、評論といった文芸誌のメインコンテンツがバランス良く収録されているので、「文芸ラジオってどんな本なのかわからないからいまいち興味が湧かない」「なんとなく難しそう」と感じている方にもオススメです。

文芸ラジオは今回から漫画を掲載しているのですが、雨下さんの作品「ネコ・ホーダイ」は近未来要素も入れたので後述の22世紀特集もカバーしていると本人が冗談半分で語っていました。



個人的には猫よりも主人公の男の子が可愛くて好きです。 


・特集「僕らのいなくなった世界 〜22世紀を考える〜」

この特集は、今回私がスタッフとして働く上でメインで携わらせていただきました。
タイトルの通り、22世紀という未来がテーマの特集です。インタビューや22世紀をテーマにしたエッセイ、SF短編小説や漫画が掲載されています。
この特集ではインタビューが3本あるのですが、22世紀というテーマでインタビューをするとその人がどんな価値観をもって生きているのか、どんなことを考えているのかといったことがわかり、面白いのではないかということでインタビュー主体の特集となりました。
テーマについての詳しい解説や裏話も含め、公式ブログでの解説がとてもわかりやすいです。
http://blog.tuad.ac.jp/tuad_bungei/archives/523

インタビューは漫画家の米代恭さん、作家の中沢健さん、建築家の竹内昌義さんの三名です。
私は米代恭さん、中沢健さんに取材させていただきました。

米代恭(よねしろきょう)さんは現在、月刊!スピリッツで漫画「あげくの果てのカノン」を連載されています。単行本は現在3巻まで刊行されており、私もお気に入りの作品です。



ものすごく簡単に内容を説明すると、巨大不明生物の襲来が日常となってしまった東京で繰り広げられる、人間関係と恋愛のストーリーです。
個人的にこの作品でとても面白いと感じているポイントは、巨大生物との戦闘で身体を怪我した戦闘員は、腕がなくなっても頭がスッパリ切れてしまっても、「修繕」すればまた元どおりになるという設定です。しかし、「修繕」するたびにほくろなど外側の小さい部分から、食・異性などの"好み"や性格といったその人の内面まで少しずつ変わってしまいます。
この設定によりSF要素と恋愛要素がうまく絡み合っており、「修繕」によってどんどん変わっていく個人をどこまで愛することができるのか、そもそも見た目がその人でも、どんどん変えられてしまうならその人を定義づけるものはどこにあるのか...ということをとても考えさせられます。

また、この作品はよく「不倫×SF」と紹介されることがありますが、私はこの作品の根幹やメインテーマは不倫という行為・関係性ではなく、「個人を定義するものは何か」「変わること・変わらないこと」という人間が個として存在する上での本質を丁寧に描いたものだと解釈しています。
そのため不倫を肯定するような内容や、昼ドラ的に不倫のスリルを楽しむような展開の作品ではありません。
また、紹介文などで主人公が「メンヘラ女子」と表現されることがありますが、主人公の言動は全て「とにかく先輩が好き」という、恋が始まったときからずっと変わらない感情の延長のもと起こっていることで、先輩や奥さんの迷惑になってはいけない、調子に乗ってしまったら自分は罰を受ける...といった描写からもわかるように、最初から自分主体で絶対に先輩を手に入れたい!と考えている訳ではありません。
そのためよく記号的に表現されるようなメンヘラ女子とは違うのではないかと思います。

公式サイトで第一話を無料で読むことができますので、読んだことのない方はこちらも合わせてご覧ください。
→あげくの果てのカノン 公式サイト

「あげくの果てのカノン」が近未来を舞台にしたSF漫画で、22世紀特集の内容とも合うのではないかとの考えで、今回は米代さんに取材をお願いしました。
インタビューでは、社会にコミットできないマイノリティという存在について、またこれからの時代に生きていくために重要なものは何か、社会における女性の立ち位置...など、米代さんの作品でも描かれている「個人」というテーマにとても沿った内容の興味深いお話をたくさん伺うことができました。
また、「ゴジラ」「ガタカ」「逃げ恥」「コンビニ人間」など、誰でも一つくらいは目にしたことがあるのでは?という色々な作品の名前も登場するので、楽しんでお読みいただけると思います。

取材させていただいた感想としては、米代さんはとにかくなんでもすごく考えて考えて自分にとっての答えを見つけていて、何事にも自分なりにしっかりと向き合っている方なんだな、と思いました。こう言ったらむしろ失礼かもしれませんが、好きな作品を描いている方がとても賢くて、しっかり考えて作品を描いているということがわかって嬉しかったです。
一旦取材がひと段落してからも、「さっき○○のくだりについて考えたんですけど...」と改めて意見を話してくださったので、とても濃くて楽しい、実りある時間を過ごすことができました。
また、マイノリティ側の考えや個としての存在、こういった社会であってほしいといった価値観が自分と近い部分があってとても嬉しかったですし、自信にもつながりました。

二人目のインタビュー、中沢健(なかざわたけし)さんについては、当ブログでも過去に記事を二件ほど書いていて、どちらも中沢さんご本人にTwitterで紹介いただいたことがあります。

作家、UMA研究家、歩く雑誌、動く待ち合わせ場所の中沢健さんに感銘を受けた話 - 総天然色日記
きょうドラマ放送開始!小説「初恋芸人」を読んで感じたこと - 総天然色日記



中沢さんは物心ついた時から怪獣が大好きで、近年では円谷プロ作品などで脚本を書かれていたり、UMAやオカルトといった未知の存在にも詳しく、そちらの方面での活動も積極的にされているので、22世紀という未知の時代についての面白いお話も伺えるのではないか...との考えで取材を依頼させていただきました。
そして何より、中沢健さんという見た目も活動も大変面白い方をもっと多くの人に知って欲しいという気持ちがありました。山形という地方にある芸術大学の学生にとって中沢さんのような個性的な方の存在を知ることは刺激になるはずですし、「歩く雑誌」という表現方法を自分で思いついて実行されているという常識にとらわれない考え方、とにかく表現活動を行いたいという姿勢は、クリエイティブな活動を行う上で学ぶものはとても多いと思います。
読者だけではなく、編集部のメンバーにもぜひ知って欲しいと強く思っていたので、企画会議で中沢さんの名前を挙げて採用されたときは嬉しかったです。

中沢さんとは元々、特撮・怪獣好きという趣味のつながりで何度か交流したこともあったのですが、今回は取材という形でお話を伺ったので、趣味の話ではなかなか気づくことのない面白い価値観を沢山知ることができました。

インタビューでは、まず中沢さんは「死というものがなくなって欲しい。生きたい人はずっと生きられる世界になって欲しい」と語っています。
最近肉親を亡くしたばかりの私にとって(取材時はまだ元気だったのですが)、校正時に改めてこの記事を読んでとても考えさせられました。

さらにこのページでは、中沢さんの著書「初恋芸人」「平成特撮世代」の紹介文を書かせていただきました。
米代さんの「あげくの果てのカノン」「おとこのことおんなのこ」の紹介文は文芸ラジオ編集長であり研究者の玉井建也先生が書いているのですが、先生の紹介文はさすがプロの文章で、短い文字数で信じられないほど本質に触れて掘り下げています。
最初はこれと並べられて恥ずかしくない文章なんて書けるわけないだろ...と、実はとてもプレッシャーに感じていてすごく苦しんでいましたが、なんとか書き上げることができました。
「初恋芸人」は人間関係における価値観の部分で、「平成特撮世代」は好きなものへの向き合い方という面でそれぞれ共感できて、ある意味救われたと言っても過言ではない二冊なので、紹介文を書かせていただけてありがたいです。

また、中沢さんのブログでも文芸ラジオを紹介いただいています。ありがとうございます!
25日発売「文芸ラジオ3号」に、中沢健のインタビュー記事が掲載されます。 - 歩く雑誌・月刊中沢健のブログ

「22世紀特集」では他にも小説やエッセイ、漫画など面白い読み物が沢山あります。少しでも近未来やSFなど興味があれば楽しめる特集ですので、ぜひご覧ください。



ゴトウトシキさんの漫画「一億総○○社会」は絵柄がとにかく好きです。


・黒木あるじの怪談教室

このコーナー、実は前号から引き続きで今回は第二弾となっています。
芸工大文芸学科講師であり、怪談小説家の黒木あるじ先生をお招きして怪談を書くコツを座談会形式で教えてくださるという内容です。 

授業で学生が書いた怪奇小説をもとに黒木先生がリライトしたものを一緒に掲載し、それぞれの違いや怖いと感じるポイント、小説としての面白さなどについて先生の解説と共に語り合っています。
今回は「非幽霊」というテーマで、幽霊の登場しない怪談だけを集めて語り合いました。

このコーナーでは私も発言者として参加しています。

似顔絵は「猫というメディア」特集で漫画「ネコ・ホーダイ」を描いた雨下さんに描いていただきました。すごく美人に描いてもらって恐縮です。あとプロフィールのガメラ3以外は武器人間とマタンゴにすればよかったと後で思いました。

ホラー映画や怪奇小説、心霊番組など怖い話が好きな人はもちろん、小説や脚本など面白いシナリオを書いてみたい人、また友達を怖がらせたい人、もしくは怖いものは苦手だけど仕組みを知って克服したい人も楽しめるのではないでしょうか。

・小説

特集内外で今回も沢山小説が載っていますが、この中で私は三本担当しています。
荒川匠「偽りのトニー・バートンと」(特集「22世紀を考える」内)
藤田遥平「邪悪なる眠り」
川村萌華「いろづく白」 

三名とも学科の卒業生もしくは同級生で、執筆時は全員在学中だったので大学内で何度か打ち合わせをしました。どの作品も違ったカラーで楽しかったです。

中でもおすすめなのは藤田遥平さんの作品です。
著者の実体験をもとにした怪奇小説風味のお話ですが、どこまでが実体験なのかはご想像にお任せします。
また、この作品はぜひ「黒木あるじの怪談教室」の後にお読みください。怪奇小説だからというのはもちろんなのですが、真の理由は小説の3行目でわかるはずです。

この作品の特徴の一つは個性的なヒロインの存在ですが、打ち合わせでは主に、このヒロインをどれだけ魅力的に描くかということに力を入れていた記憶があります。
藤田さんはゼミの先輩で、担当教員もゼミの先生だったので本当に楽しくおしゃべりのような感じで打ち合わせをしていました。

「22世紀」特集内でSF小説を書いてくださった荒川さんは、前号に引き続きの担当です。前号では最終確認でしか携われなかったのですが、今回は初稿から担当することができました。
前号掲載の「Carly」も個人的にお気に入りなので、こちらもぜひ。

川村さんは今回が文芸ラジオ初掲載、全国誌デビュー作です。
タイトルの印象通りの柔らかくてあたたかい雰囲気の恋愛小説です。優しい世界観の表現がとても好きです。  

3.まとめ

以上が文芸ラジオ第3号についての紹介と裏話でした。 
他にも評論特集「有川浩対西尾維新」やイベント講演録「創作・人工知能・SF -なぜ『書けないのではない、書かないだけだ』になるのか-」など、面白いコンテンツが盛り沢山です。
人工知能の講演では、機動戦士ガンダムTHE ORIGINの設定考証などをされている作家の高島雄哉さんと、デジタルゲームの人工知能開発者の三宅陽一郎さんをお招きしています。

さらに文芸ラジオでは毎回、新人賞の募集をしています。未発表の小説もしくは評論であればどなたでも応募できます。
今回は第二回新人賞の選評と受賞作を掲載しています。
文章を書くのが好きな方、全国誌デビューしたい方はチャンスなのでこの機会に応募してみてはいかがでしょうか。 

文芸ラジオ第3号は全国の書店と通販サイトで購入できます。

文芸ラジオ 3 - 紀伊國屋書店ウェブストア

文芸ラジオ3号 - amazon

amazonは在庫が切れても数日以内に補充してもらえるので、在庫切れの際は申し訳ありませんが少しだけお待ちください。
もしくはお近くの本屋さんに注文すれば入荷してもらえると思います。 

私は今年で四年生になるので、文芸ラジオに本格的に携わるのは今回が最初で最後ですが、一年間企画を立てたり取材をしたり...とメンバーと協力して本を作り上げたのは忘れられない思い出になりました。 
本当に面白い一冊が完成したのでもっと多くの方に読んでいただきたいですし、今回の売り上げや評判によって次号以降の方向性も変わっていくと思います。
私は来年度以降この編集部から離れてしまいますが、次の代のメンバーにもより面白いものを楽しんで作ってもらってずっと続いてほしいです。
ですので、この記事を読んで気になった方には3号を読んでいただきたいです。
そして、是非感想をSNSやブログに書いてください。 
よろしくお願い致します! 

予備知識ほぼゼロでキンプリをみた。

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1月の終わり頃です。
友人と一緒に、劇場版KING OF PRISM by Pretty Rhythmという映画を見に行きました。

…ん?何だそれ、知らねーよ。自分が読んでもわからなさそうだし、この記事は閉じていいかな…と思ったそこのあなた。ちょっと待ってください!!
キンプリは、「王様のブランチ」週間映画ランキングで、ミニシアター部門1位を獲得した作品なんです。






現在もTwitterを中心に口コミがどんどん広がっていって、私のように予備知識ほぼゼロの状態で劇場に足を運んで、プリズムのきらめきにあてられる人々が後を断ちません。
今の日本、いや世界のトレンドを知りたい方、毎日がなんとなくつまらないと感じている方、思いっきり笑いたい方、新しい世界を見たい方は是非!この記事を読んで、キンプリという作品を知り、そのまま劇場へ足を運んでください!

と、こんなことを書いている私もタイトルの通り、初見時は「なんかヤバいらしい」「アイドルアニメらしい」というフワっとした認識しかありませんでした(当時はまさか応援上映含め3回も観ることになるとは思わなかった)。

この作品、結論から言うと、
笑っていいのか純粋に感動していいのか迷った映画は初めてです。

しかも、どちらも正解なんです。同じシーン、同じ作品で、笑いと感動が両立しているんです。リバーシブルなんです。一粒で二度、いやキンプリに限った話だと五度くらいおいしいんです。

ここまで書いても観てない人には意味がわからないと思います。
でも大丈夫!観ていてもわからないから。

作品を観ても観なくてもわからない、というか観る前の謎は観たら大体解決するのですが(例:みんなが言ってるセロリってこのシーンか!等)、観たら観たで今度は新たな謎(例:自分は一体何を体験したんだ…?)が生まれる作品なので、解説をするという行為自体があまり意味を持たないのですが、
ここまでの文章はキンプリという作品自体の情報をまったく知らない読者の方にとってあまりに不親切すぎますね。
なので、ここからは便宜上一般的な映画レビュー的な文法で作品解説をさせていただきます。

◆KING OF PRISMとは

2年前に放送していた児童向けアニメ「プリティーリズム(通称プリリズ)」シリーズの三本目、「プリティーリズム・レインボーライブ(通称RL)」の大人向けスピンオフ作品です。



プリティーリズムは、ファッションと音楽がテーマの同名の女児向けアーケードゲームの販促アニメです。
ここまで書いて察しの良い方はお気づきかもしれませんが、現在筐体稼働・アニメ放送ともに現役の作品「プリパラ」の前身シリーズでもあります。
プリティーリズムシリーズからのプリパラは、世界観は一新されていますが、プリティーリズム筐体で使えたアイテムのQRコードはプリパラ筐体でそのまま使えますし、劇場版や3DSソフトなどで両作品のキャラクターの絡みもあります。

(関連記事:女児アニメ「プリパラ」にハマってしまった人の話)

話をキンプリに戻します。キンプリは、プリティーリズム・レインボーライブの男子キャラクターをメインに、多くの新キャラクターを加えて制作されたスピンオフ作品で、本編のその後が描かれた正式な続編です。

キンプリは、レインボーライブ本編で結成された男子3人のチーム「Over The Rainbow」(通称オバレ)と、彼らの後輩となる新キャラクターであり、本作主人公の一条シン君を中心に話は展開していきます。



プリティーリズム・レインボーライブ本来のターゲットは女子児童なので、登場キャラクターも女の子がメインだったのですが、キンプリは男性キャラクターがメイン(というか、キャラクター数自体は決して少なくないのですが、しゃべっているのは男しかいません)。
例えばプリキュアシリーズ等、女児向けのアニメに成人男性のファン(いわゆる大きなお友達、おじさん)がつくことは近年珍しいことではなく、”アニメファンの間では”常識になりつつあると思います。しかし、キンプリは原典が女児アニメでありながら、成人女性をターゲットのスピンオフという、大変挑戦的な作品なのです(しかも、劇場には女性だけでなく、多くの男性ファンが訪れています)!

シリーズが終了し、TV本編は放送していない作品(だからこそ作ることができたというのも大きいですが)のターゲットの違うスピンオフ。当初は小さい規模でひっそりとやっていく予定だったようですが、主にネットの口コミ効果でプリズムの煌めきがどんどん広がり、多くの劇場が公開期間延長、上映劇場追加、イベント開催などの奇跡が起こり、ついに王様のブランチでもサラっと紹介されるまでになりました。

…と、ここまで書いて、実は私はプリティーリズムシリーズは、レインボーライブすらまともに観たことがありません。プリリズファンの皆様、知ったような口をきいて本当にすみません…。
キンプリを初めて観た当時はTV本編を1話も観ていませんでしたし、現在はレインボーライブTV本編を少しずつ視聴を始めたものの、その話数は片手で数えられる程度です。

自分が今大好きなプリパラ。それが始まる前に昔放送されていた、プリティーリズム・レインボーライブというアニメのスピンオフだということは最低限知っていた上で、あえて予習を全くせずにキンプリを観た理由は、それはそれで他の人と違った視点で楽しめるんじゃないかな、と思ったからです。

その予想は正解だったようです。自分の感想と、ネット上のプリティーリズムファン(通称プリズムエリート)の感想を照らし合わせたところ、キンプリはプリリズを知っていなくても十分楽しいし、知っているともっと楽しいと。

ということでここからが本番。キンプリという作品がどれだけ恐ろしいのかを解説します。

◆KING OF PRISMの魅力

1. 男の裸が多い。



何がしたいのってくらい男の裸が多い。油断するとすぐ画面が肌色になる。あまりにもホイホイ脱ぐし、それが大体唐突だったり、もしくは何かしらの笑える演出とセットだったりするので、この60分の間に男の裸=面白いと脳内で紐付けられてしまって、こっちはいい年して裸を見るだけでもう笑えるっていう、自分の笑いの沸点が小学生レベルにまで下がる現象が起こります。

しかもこれ、前売りの段階からだったんです。アニメ系のニュースをチェックしている人は見かけたことがあるかもしれませんが、5枚セット前売り券と公式グッズのデザインがまさかのメインキャラ(全員男)が外で全裸で微笑んでいる絵面で。
劇場公開1週目の入場特典はクリアファイルで、この5枚セット前売り券の半券を挟んで服を着せてあげるデザインでした。

→履いてません!? 劇場版『KING OF PRISM』衝撃の劇場前売券ビジュアルが解禁! - animate.tv

→キンプリの入場者プレゼント情報! - KING OF PRISM 公式サイト


そして「こいつら意味もなく肌晒しすぎだろwwwww」って思ってたら、まさかの伏線回収があるんですよ。クライマックスのめちゃくちゃ感動的な、これはもう純粋に感動できるシーンなんですけど、そこで今までやたらと自分らが脱いでいた理由が主人公・シン君の口から語られる。その理由がまた良い。すごく良い。ウケるとかじゃなく純粋に良い。この主人公だからこそ言える台詞であり、この60分で彼が積み上げてきたものがきちんとあるので、とても説得力のある台詞でした。
…あれ?男が脱ぎ過ぎて面白いって話をしていたはずだったんだけど…おかしいな。

2.「アニメのライブシーン」の常識を覆すプリズムショー



原典が音楽がテーマの作品なので、キンプリにも勿論ライブシーンは登場します。
ここで「アイドルアニメ」という表現をしていないのは、作中でステージ上で歌って踊る等パフォーマンスをする人のことは「アイドル」ではなく「プリズムスタァ」と呼ばれているからです。
「プリティーリズム」シリーズには「プリズムショー」という作中独自の文化があります。
プリズムショーとは、簡単に説明すると、フィギュアスケートとアイドルのパフォーマンスを合わせたようなものです。

そしてキンプリの主人公・シン君はこの作品でシリーズ初登場のキャラクターで、彼はプリズムショーというものをほとんど知らない状態から物語はスタートします。なので、プリティーリズムという作品、プリズムショーという概念をまったく知らない人でも、主人公と同じ視点で物語を楽しむことができます。

そのプリズムショーですが、キンプリは本編スタートとともに、Over The Rainbowによる魅力200%のショーが始まります。
映画館のお客さんのほとんどは、まずこのシーンで心をガッチリ掴まれます。いや、掴まれない人なんているのか…?
美しいCGで描かれる、最高にカッコよくて、楽しそうな男の子達のパフォーマンス。劇中の観客の絶叫に近い黄色い声。短い時間の中に、盛り上げ要素がこれでもかというくらい散りばめられています。

あー、男の子達カッコいいなー。楽しそうに歌ってるなー。なるほどこうやってアイドル要素とスケート要素を合わせているわけか…などとプリズムの煌めきに浸っていたら、

何かがおかしい。

さっきまで歌を歌っていたはずの男の子達が、女の子と自転車を二人乗りしてラブラブ空間を演出している…。と思ったらいつの間にか再び野郎だけの空間になり、男三人で雨の中全力で自転車を爆漕ぎしてETみたいに月をバックに自転車が浮遊しだして、最終的に「公道での二人乗りは禁止だよ♥」と交通ルールと説いてきた瞬間、
「この映画はこういう作品なんだ」「固定概念にとらわれてはいけない」
と直感的に思いました。

その後も、回想シーンでは東映特撮を思わせる爆発をバックに歌う男、ステージ上に出現するベッドにスケート靴を履いたまま横たわる男共、興奮のあまり人間であることをやめ大量の黄色いバラに姿を変えてしまう女性ファン達など、脳の処理が追いつかなくなる映像がバンバン飛び込んできます。

3.脳に直撃する小室サウンド。大和アレクサンダーという男



そして中盤で一番盛り上がるシーンが、EZ DO DANCEをBGMに展開していく2つのバトルです。
EZ DO DANCEとはあのEZ DO DANCEです。元々、プリティーリズム・レインボーライブはOPや挿入歌でEZ DO DANCEやBOY MEETS GIRL、CRAZY GONNA CRAZYといったTRFのカヴァー曲を使用しています。

このシーンでOver The Rainbowの一員である仁科カヅキくんに喧嘩を売ってくるのが、大和アレクサンダーというガタイのいい男子高校生。



公式サイトの紹介文がもうおかしい。

この大和アレクサンダー君、まず見た目が怖いし、超ドスのきいた声。この声がめちゃくちゃ怖い。でもカッコいい。
…なんと声優は、昨年アニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ」プロデューサー役で一躍話題の人となった18才の武内俊輔さん。
つい最近までアイドルのプロデューサーの役をやっていた人が、このキンプリでは
「アイドル気取りがヘラヘラ女に媚び売りやがって…ストリート系の地位をどこまで落とせば気がすむんだ?」
「俺はてめぇをブチのめさねぇと気がすまねェ」
「バラバラにしてやる」
「地獄へ堕ちろ」
などとこれでもかというくらい物騒な台詞をポンポン言います。更に、EZ DO DANCEを歌っているのも武内俊輔さん(と、仁科カヅキ役の増田俊樹さん)です。彼の物騒な台詞と歌声が同時に聴けるのも(今のところ)キンプリだけ!

しかも武内さん、実はこのシリーズの出演は初めてでなく、「プリパラ」TV本編ではドルオタの男性とアシカの船頭を演じています。アシカ役ではCD化されていない歌を綺麗な声で歌っています。

そんな武内さん演じる大和アレクサンダー君の見せ場であるEZ DO DANCEのシーンですが、男二人がウェットスーツを着てダンスバトルを始めたかと思ったらドラゴンを召還して竜巻を起こし、大剣をマトリックスみたいにかわしたかと思ったら2撃目を思いもよらぬ手段で防ぎ、勝負の決着はまさかの
...!?という、大変アツい展開です。
「まさか自爆する気か?!」
という、バトルものお約束の台詞もあります。いやなんのアニメだこれ
そして別の場所では、まだプリズムショーを知ったばかりの一条シン君と、Over The Rainbowの神浜コウジくんの先輩後輩同士でのプリズムショーの特訓が展開されます。これも王道の修行シーンという感じがしてアツい。
男性ヴォーカルのEZ DO DANCEをBGMに、ド派手な男の真剣勝負と体育会系的特訓シーンが同時展開される。こんなの楽しいに決まっているじゃないですか!!!!
実際このシーンは画面から伝わってくる熱量がすごすぎて、私は途中からBGMが全く頭に入っていませんでしたし、このシーンで
「この映画、一回観るだけじゃ足りない!」
と確信しました。

4.笑えるし泣ける。泣けるのに笑える。



本作全体の魅力である「笑いと感動の両立」。これ、笑えるシーンと泣けるシーンが同じくらいの比率で含まれているとかではなく(一部そういったシーンもありますが)、同じシーンなのに観る人の捉え方によって笑えるし泣けるという、新感覚のなんだかすごい作風なんです。

その中でも特に顕著なのは、

・儚げな美少年が突然、壮大すぎるバラードBGMをバックに主人公に抱きつくシーン
・オバレの3人がギリシャ神話のような衣装を着てプリズムショーをしていたはずがハリウッド行きの電車が空から走ってきて、三人で星座になるシーン
・まさかのフルCGで凝ったカメラワークでの学校へ行こうパロ

この3つですね。

泣けるのに笑える(私は9割笑いましたが…)理由は、複数考えられます。
台詞だけ抽出して、彼らの身に起きている出来事を考えると泣ける。でもそれらを演出する要素の誇張があまりにも激しい、もしくは発想が斜め上で、どちらにせよ「一般的な感動的なシーンの演出」の枠でやる、という優等生的な姿勢をとっていないこと。また、「乙女ゲー」「男性アイドルアニメ」等の文化のパロディ的な要素が大きいこと、などが考えられます。
そして、原典の「プリティーリズム」シリーズを知っていればいるほど感動で泣けるという感情が強くなる。
そのため、「感動と笑いの両立」ができているのではないのでしょうか。

あと余談ですが、仲の良い相手同士で、しばらく会えなくなるという別れ際に、とりあえずなんでもいいからとにかくひとつでも多く言葉をかわしたい!という心理で「身体に気をつけて!」と若干かしこまった表現でお互い同じことを言い合ってしまうところなんかは、最初は笑ってしまいましたが、よく考えるとリアルだなと思いました。



▲ パンフレット。登場キャラクターの声優さんも「シナリオがとても突き抜けている」「弾けている」とおっしゃっているので、あぁ我々がおかしかったわけではないんだな…と安心しました(?)

◆キンプリを観てください

他にもキンプリは、やたらと詳細に材料を説明する豪華手料理や、セロリの調理法、独特なコミュニケーション方法をとるキャラクターなど、魅力の沢山つまった作品です。

特に序盤でふれた自転車の交通ルールと、セロリが苦手な人のための調理法は、原典が児童向けアニメであることの名残というか、リスペクトなのかなぁ、と思いました。


▲プリズムショーの知識ほぼゼロの私でもこんなに長ったらしい文章で語れるくらいには堪能できましたし、何より監督ご自身もこのようにおっしゃっています。

この記事を読んで少しでも気になった方は、迷うより先に観てください!
というかこの記事のこんなところまで読んでくださっている方は(ありがとうございます)、プリズムのきらめきを感じることができる素質が十二分にあります!!
しかもキンプリは、DVD化の予定は今のところありません。実はかなり予算ギリギリで、劇場公開されたことが奇跡のような作品なのです。

観て大興奮するも良し、泣くも良し!「なんだったんだあれは…」と呆然とするも良し。
キンプリを観てください!

***

参考:
KING OF PRISM by PrettyRhythm 公式サイト

きょうドラマ放送開始!小説「初恋芸人」を読んで感じたこと

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小説「初恋芸人」を読みました。

著者は、以前当ブログで紹介させていただいた、脚本家の中沢健さん。

作家、UMA研究家、歩く雑誌、動く待ち合わせ場所の中沢健さんに感銘を受けた話 - 総天然色日記

こちらの記事は公開後、中沢さんご本人にも読んでいただき、感想をツイートしていただけました。

「ウルトラゾーン」や「ガルーダの戦士ビマ」など脚本家としての中沢健の仕事が入口となって、「ビートたけしの超常現象(秘)Xファイル」をご覧になられた方の感想ブログ。https://t.co/Z6w89lwzN3こんなふうに見てくれている方もいるのだと思うと本当に励みになります!

— 中沢健「初恋芸人」3月ドラマ化&文庫化! (@nakazawatakeshi) 2015年12月31日

こういった体験をできるのが、ブログをやっていて、自分の意見を発信していてよかったと思える瞬間です!
ありがとうございます...!

この「初恋芸人」、なんとドラマ化が決定していて、放送は今日。3/1からNHKBSプレミアムにて毎週火曜23:15〜です。



主演は柄本時生さん。ヒロインはなんと、松井玲奈さん!
原作の雰囲気を表現するのにふさわしい、ピッタリのキャストです!!

この「初恋芸人」原作小説、以前から気にはなっていたもののチェックできていなかったのですが、今回ドラマ化の発表を聞いて、今しかない!と思い、楽天ブックスで注文しました。在庫は、まさかのラスト1冊!!
(原作小説「初恋芸人」は、3/18に文庫版の発売も予定されています。)

ということで、今回はこの小説の感想を書かせていただきたいと思います。

…が!!
ドラマ放送直前ということで、物語の結末には、あえて触れません。当記事は、ネタバレなし感想です!

本当はこちらの作品、物語の結末こそが作品テーマそのものであり、この作品を語る上では外せません。
テーマと結末が切り離せないので、どちらかを語ると自然とすべてを明かしてしまうことになる…。
レビューなので、本当はそれでもよいのですが、

ドラマで初めて「初恋芸人」を知る人
ドラマを観てから原作を読もうと思っている人

には、ドラマでも小説でも、物語そのものをご自身で感じて、その結末を見届けていただきたいからです。

…いち読者の身分で生意気ですが、それくらい私の中でこの作品が特別な存在になってしまったのです。お許しください。
原作のネタバレあり感想は、ドラマの放送がすべて終わったら公開する予定です。

そもそも、ドラマと原作で、結末や、それに至る展開が同じかどうかも今はまだわからないですよね。

ということで、今回は、小説としての「初恋芸人」主人公から私が感じたものを記していこうと思います。

◆◆◆

主人公の佐藤賢治、いや、呼び捨てにするのはちょっと気がひけるので、佐藤賢治さんですね。
彼は25歳の売れないお笑い芸人で、年齢=彼女いない暦。
更に、中学時代いじめに遭っていた過去があり、女性が苦手です。

お笑い芸人という点を除くと、現実にも当てはまる方は決して少なくないでしょう。
特にここ数年、おそらくSNSの普及、また「リア充」という使い勝手の良い言葉の浸透などにより、自分という人間の短所、他人と比較して己の人生の悲惨さにクローズアップして、笑いをとるでもなく、たんに自虐というか「そういうもの」として、また多くの人がステータスのように公言する文化があります。

元々が2ちゃんねるなどの匿名掲示板で主流だった文化なので、Twitterなどインターネット上のほうがそういった傾向が強いように感じますが、近年はリアルとネットの文化に壁がなくなってきているので、リアルでも若者を中心にそのようなコミュニケーションのとりかたをする人は多くなってきています。

いじめられっ子だった、異性との接し方がわからない、童貞だ、仕事も成功しているとは言えない、自分という人間に自信がもてない…と、この情報だけみると、親近感を抱く方は少なくないと思うのです。

しかし、この「初恋芸人」主人公・佐藤賢治さんのような人間は、現実にはなかなかいないでしょう。

なぜなら、彼はどこまでも謙虚で、あたたかく優しい人間で、美しい心の持ち主だからです。

まず理由のうちひとつとして、私の主観ですが、前述の自虐をコミュニケーションの手段として使う若者、普段から自虐ばかりする現代の若者には、佐藤賢治さんのような心を持っている人はあまりいないんじゃないかな、と思います。
むしろ、自分をいじめた者への強い憎しみ、自分を受け入れてくれない世の中への怒り。また、自分と仲良くしてくれない人間、多くの場合は「リア充」(人によっては異性全体)への軽蔑。そういった気持ちの大きい人が、「自虐による自分の切り売り」をやっている印象です。
なぜなら、正直に言うとこれを書いている私自身に心当たりがあり、またネットでもリアルでも周りにそういった知人が多いからです。

「初恋芸人」主人公の佐藤賢治さんの中にも、勿論そういった気持ちはあるでしょう。「バレンタインというムカつくイベント」(P5)という表現は、本文が始まって早い段階で目に入る文章です。人間関係がうまくいかず、イライラして行き場のない怒りで意地悪な気持ちになるシーンもあります。
人間なので、そのような感情があるのは当然のことです。

しかし、それ以上に彼は謙虚で優しい。
ほとんど、常にと言っていいほど彼は反省している。どんな小さな卑しい感情でも、そんなふうに思ってしまった自分を反省し、考えを改めようと努力している。
そんなところまで反省しなくてもいいのに!そんなことになったら誰だってそう思ってしまうよ…。というところですら、自分を省みています。
「〜〜(ネタバレになるため省略)を想像したら、胸がいたむ。そこで胸がいたんでしまう自分も、いやだった。」(P115)と。ここの場面は、彼の苦しみを想像してしまって、自分もつらい気持ちになり、早く救ってあげたいと思いました。

彼がそのような、常に反省するような考え方になったのは、中学生のとき、好意を抱いてすらいない女子生徒から
「佐藤君と付き合うくらいなら、死んだほうがマシよ!」(P4)
と言われたことが大きく影響しています。25歳になったいまでもその言葉が忘れられないようで、
「ボクが近づいても女性は不快な気持ちになるだけ。」(P36)
とハッキリと表現しています。

しかしそれだけではないと私は思います。
彼自身が、実はとても強い人間で、他人への思いやりの心を忘れていないからです。
これが、現代の自虐コミュニケーションの若者の大半と、佐藤賢治さんは違うと感じたふたつめの理由です。

自虐をする人間、というと、つねにネガティブで悲壮感にあふれ、近寄りがたさを感じさせる暗い雰囲気をまとっていて、こちらまでどんよりした気分になってしまう…そういった人を想像します。
しかし彼は、基本的に考え方はネガティブではあるものの、どんよりとした暗い空気はあまり感じさせません。
芸人という、他人を笑わせて楽しい気持ちにさせるという職業の影響は勿論あるでしょう。

また、それ以上に私が感じたのは、彼は「今自分がこうして生きていること」への道しるべを示してくれた存在すべてに感謝しているということです。

直接的な表現でそのような言葉が何度も登場するわけではありませんが、本文中のちょっとした表現や、言葉の端々から、とても伝わってきます。
一番わかりやすいのが、いつも仕事を紹介して面倒をみてくれる先輩芸人の山形ツチノコさん。そして、何かにつけて食事をおごってくれる高校の同級生である、橋本晃。更に「ボクに向かって初めて笑いかけてくれた女性」(P24)であり、本作ヒロインの市川さん。そして、ネタを見てくれるお客さんに、子どもの頃から自分に寄り添ってくれた、フィクションの世界の怪獣という存在。
そういったものへの感謝の気持ちです。

そのような気持ちを出来るだけ忘れずに生きるというのは、単純なことのようでとても難しく、しかし幸せに生きていくうえでとても大切なことです。

そして、小説である「初恋芸人」の主人公がそのようなあたたかい人間であると読者である私に感じさせた理由は、他でもない、著者の中沢健さんが優しい人間だからではないでしょうか。

つい最近、有名な音楽家が
「純粋で美しい音色を奏でられる人に悪い人がいるわけがない」(=表現者の性格と作品の美しさは一致するものだ)
と発言し、反論意見でTwitterが炎上したばかりです。私もこの発言は正しくはないな、と思いましたが、
「初恋芸人」主人公の佐藤賢治さんと、それを生み出した著者である中沢健さんはその限りではないと思います。
それは、この作品に限らず、中沢さんの書かれる文章からはいつもそういった雰囲気を感じるからです。

私は以前から、中沢健さんご本人のTwitterアカウント、そして中沢さんの様々なメディアでの発言を集めたbotをフォローさせていただいています。
ご本人やbotのツイートを読んでいていつも思うのは、柔らかくてあたたかくて、優しい雰囲気が伝わってくるなぁということです。

と言っても言葉の選び方や、句読点の付け方など、そういったパーツをある程度意識すれば優しい人風の文章は誰にでも書けるのでは、とも思いますが、文章から伝わってくる、文字で書かれている情報以外のもの、オーラとでもいうのでしょうか。そういうものはあると思います。

私自身、全くそんなつもりがなくても、文章から威圧的なものを感じ取られて怖がられることや、がさつな性格が見えてしまう文章だな、と自分で感じることがしばしばあるからです。
なので、そんなときに中沢さんの文章を読むと、こんな美しい心で生きていることが素敵だな、と思います。
なんだかとても大げさな表現のように見えて、胡散臭いかもしれませんが、今回初めて中沢さんの小説家としての文章を読んで、より、そう思うようになりました。

◆◆◆

そして、本作のもうひとつの魅力。
「初恋芸人」は、中沢さんの一番の専門分野である特撮ネタが、これでもかというくらい飛び出します。
「ウルトラマン」「ゴジラ」シリーズは勿論、「ガス人間第一号」「サンダ対ガイラ」「シルバー仮面」まで…。
知っている人はニヤリとしてしまうし、知らない人にもきちんと意味がわかるように丁寧な解説がされている点も、すばらしいです。



勿論それはドラマ版でも完全再現されているようで…!!
特に写真右の、「ウルトラマン」登場怪獣の、ゴモラのような着ぐるみを着た男。主人公とは別の、怪獣オタクの「ガラバン」です。
ガラバンは、小説を読んでいたときの想像のまま、いや、それ以上に「っぽい!」な姿で、とてもテンションが上がりました!



また、佐藤賢治さんの部屋は勿論怪獣だらけ!
伏せ字でも、パチモンでもない、円谷プロの正規グッズがチラチラと画面にうつる。これだけでワクワクしちゃいますね。

更に、小説「初恋芸人」は、小学館 ガガガ文庫から、3/18に文庫版が発売されるそうです。

日付が変わって情報解禁!3月18日発売の文庫版「初恋芸人」(小学館 ガガガ文庫)の表紙ビジュアルが公開されました!上条 衿さんが描かれた市川理沙が、とっても可愛い!!https://t.co/nVQQaf8EFx pic.twitter.com/s7LHARDH1v

— 中沢健「初恋芸人」3月ドラマ化&文庫化! (@nakazawatakeshi) 2016年2月29日


表紙は、この物語の世界を凝縮したような素敵なイラストになっていますね。
こんなにかわいいイラストにバルタン星人の姿が描かれるとは…!
さらに、中沢さんのオリジナル怪獣「ほしくい」の姿も。
単行本の表紙は渋谷の街を歩く中沢さんの後ろ姿の写真で、作中の空気を切り取ったような印象的な表紙で好きだったのですが、文庫版の表紙もすばらしいですよね。

◆◆◆

ということで、「初恋芸人」ドラマ版は、日付が変わって今日。
23:15〜よりNHK BSプレミアムで放送開始!
毎週火曜放送、全8回です。
「新ウルトラマン列伝」と合わせて、1日で2回もTVでウルトラマンや怪獣の姿が見られます!

「火曜深夜も、見てくれよな!」というやつですね。

たまには畑仕事もいいぞ。

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また、久々の更新となってしまいました。

今回はプライベートな日記的な内容です。


突然ですが、私の通う大学には、畑があります。
といっても農業系の学科があるわけではなく。畑のある芸術系大学なのです。



▲奥にうっすら見える三角屋根の建物が本館です。本当に、大学の敷地内に畑があります。


なぜ芸術系大学に畑があるのか。それは、美術科テキスタイルコースの学生が、染料を作るために紅花と藍を育てているからです。
毎年、教授や県内の農家の方の指示のもと学生が主体となって動き、作品に使う材料を自分達の手で育てています。
夏に収穫された紅花は、その後染料として保存され、毎年冬に開催されるイベント「紅花ルネサンス」でその美しさを発揮します。
なぜ夏に収穫するのに冬まで待つのかというと、紅花の染料は気温が低いほうが美しく色が出るためです。



ここで私の身の上について。私は去年までテキスタイルコースの学生でしたが、自分の意思で今年から文芸学科に編入したので、テキスタイルの所属ではなくなりました。
なので、畑に参加しなければならないわけではないし、正直な話、実はテキスタイルに在籍していた頃から畑仕事にはあまり乗り気ではありませんでした。朝早いし、何が楽しいのかよくわからないし、虫嫌いだし。興味ないから、専門的なこと学ばなきゃいけないのも面倒くさいし...。

しかし、テキスタイルと離れて文芸という自分が本当に好きなことを始められて心が軽くなったからなのか、友達が先輩として指揮をとっているので応援したい気持ちになったからなのか、今年から、ちょっとだけお手伝いしようかなぁ、という気持ちになりました。
ちなみに、誤解を招いてしまうかもしれないので補足ですが、テキスタイル生としての日々が辛かったわけではないですし、テキスタイルでの数年間のおかげで今の自分があると思っています。

ということで、一昨日と今日、友達にスケジュールを聞いて参加してきました。種まきは来週なので、今週はまだ雑草抜きや苦土石灰まき、土を耕す作業など、畑の土台作りの段階です。



一昨日はとても天気がよく、気持ちよく作業できました。といってもまだ朝は少し冷えますが、大学自体が山の上にあるので、畑からの眺めがよくて、これだけでちょっと感動。
私は今まで、あり得ないくらい不真面目で非協力的な学生だったので、こうして畑の土にふれるのは1年以上ぶりでした。
草や土のにおいも色も、雑草の生命力の強さも、畑の空気も、すべてが初めてみたいに新鮮であり懐かしくて、ちょっとだけ初心に返りました。


かわって本日は、朝からずーっと雨。ざんざん降りではないのですが、小雨がずっと続いています。大学の学食二階でこれを書いている今も、窓の外の人はみんな傘をさして歩いています(私、自転車で来たんだけど、いつ帰ろう...)。



▲大学の裏にある山も、えげつないほどの霧がかかっていました。

そしてこの程度の天気ならば予定を変更せず雨天決行するのがこの大学のテキスタイル...。
家を出た瞬間、まさか、いや、まさかな...?と思って友達に連絡をとってみたら、期待を裏切らず予定が進んでいるようでした。

雨の日の畑は、当たり前ですが土がしっとりと濡れていて晴れの日とは違ったやわらかさがあって、またミントかハーブかわかりませんが、雨に濡れた雑草のにおいが気持ちよく、濡れて寒いのを除けばこれもこれでなかなかよいです。

久々の畑で、自分が好きだなーと改めて思ったところは、土の独特なやわらかさです。長靴をはいて、種をまく前の畑を遠慮なく歩いて雑草を抜くという作業。虫に遭遇するのは多分永遠に慣れることはないでしょうが、自分の体重で土が沈んで、足の裏でフカフカを感じるのがなんとも楽しい。

こんなに沢山土や植物があるという環境自体が、少なくとも私にとってはなかなか非日常のことです。
スマホやPCの画面を見たり授業を聞く毎日の中で、一週間のうちたった数時間だけでも、太陽の下でこの畑と向き合って生命を育てるという時間は、日々の生活にメリハリをつけてくれます。
少々大げさな言い方かもしれませんが、この習慣の積み重ねが、人生が豊かになる手助けをしてくれるのではないでしょうか。
20代の今、こうして畑に触れることができ、しかもなかなかない紅花を育てるという行為に携わることができるというのは貴重だな、と今になってやっとわかることができました。
在学中はこれからも、できるだけ畑に顔を出して土や植物と触れ合っていきたいです。

大学のサークルで広報誌を作りました。

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こんにちは。

2月、3月は引っ越し等で色々とバタバタしておりまして、また新居のインターネットが開通していなかったため、ほとんど更新することができませんでした。
どうでもいいですが、私は普段長めの文章を書くときはパソコンのほうがいいものが書けるとなんとなく感じているので、ブログの更新はパソコンから...というこだわりがあります。

そしてバタバタしていたもうひとつの大きな理由、それが今回の本題。
大学のサークル広報誌、いわゆる部誌を作っていたからです。



私のTwitterを見てくださっている方は既に耳タコかとは思いますが、改めて解説させていただきます。

◆発行の経緯

まず、われわれは何サークルか。それはもう答えはひとつ。特撮サークルです。
団体名は「特撮研究室(ラボ)Q」。でも長いのでだいたいみんないつも「特撮サークル」と呼んでいます。



そんな特撮研究室Q、まだできて3年しか経っていない...とも言えるし、3年も経ったともいえるのですが、大学のサークルの中で歴史は浅いほうかと思われます。
生まれてから2年間、模索していろんなことに手を出して活動し、時には挫折し、時には素晴らしい青春の1ページとなり、紆余曲折を経て現在に至るのですが、なにぶん知名度が低く、また特撮という限定的なジャンルのためメンバーは少なく、部費がおりないので金銭的に余裕もないため、今後の活動に行き詰まっていたのです。

そういった状況で思いついたのが、
「部誌を作ろう!」
というアイデア。

専門的な難しい知識や技術はほとんどいらないし、みんなが普段集まっているときにしゃべっているようなことをそのまま書くだけでも絶対に面白いものになる。形にするのとしないのとでは大きな差がある。
そして、我々は大学入学時にAdobeのソフトを手に入れているので、ページレイアウトソフト「InDesign」が使える...!!
更に、本として形に残すことで自分達の活動を記録として残すことができる。

このような理由から、サークル広報誌「流星キック」の企画がスタートしました。

企画を始めたのが去年の12月頃で、それに伴いクラウドサービスで今までのサークルの写真や議事録などのデータをまとめたりして、タイトルロゴを作ったり、そのために死に物狂いでIllustratorを勉強したり、後輩に表紙のイラストを書いてもらったりして、今年の2月の末に完成いたしました。

◆まさかの需要!



制作段階から私のTwitterやサークルの公式アカウントでリアルタイムで情報を出していたため、発行前から多くの方の目にとまったようで、学外の山形県民の知り合い、また山形県外の顔もしらないTwitterの方からも、沢山の「読んでみたい」という声をいただきました。

顔も名前も知らない、地方の素人学生が趣味でやっている活動に、ここまで興味を持っていただけるなんて、全くの予想外で...。嬉しいという気持ちより先に、驚きのほうが先に出てきました。

そして、なんだかものすごい期待されている...?というのはなんとなく実感できるようになったのですが、これだけ期待させておいて、読者の方にとってつまらないものだったらどうしよう、という不安も。

ここだけの話(ネットに公開しておいてここだけも何もないのですが)、サークル広報誌、部誌と言いながらも内容は7割が私の書いた文章で、更に企画もレイアウトも内容も全て私のセンスなので、この本の制作と一番長い間向き合っていたのは私です。

おそらく、文章を書いたり、何かしらの創作活動などをされている方はわかる感覚かと思うのですが、あまりにも長い間作品と向き合っていると、これが面白いのか面白くないのか。カッコいいのかダサいのかがわからなくなります。
また、自分は面白いとかカッコいいとか思っていても、他の人が見たら全くそう感じないということも考えられます。
私は部誌に限らず、ブログを書くとき、また大学の課題でレポートを書くとき、この感覚がいつもあります。
だから、この「流星キック」創刊号も、実際に読んでいただいた方の感想をいただくまで、とても不安な気持ちは大きかったです。

2週間ほど前に、私のTwitterのフォロワーと身内限定で郵送による先行配布を行ったときなんかは、早くみんなの家に着いてほしい。はやく読んでほしい。感想が聞きたい。と毎日そわそわしていて、一番到着を楽しみにしていたのは私だったんじゃないでしょうか。

私のTwitterのフォロワーはブログをやっている方が多いということもあり、皆さん文章を書くことや読むこと、また自分の好きなものから何かしらの意味を読み取って自分なりの考えをもつことに慣れています。
そして特撮や映画、漫画アニメ等の知識に長けている方が多いです。
そのために、余計にどんな反応がくるかハラハラしていましたし、またとても楽しみでもありました。
この方達だったら、身内だからという理由だけで手放しに褒めるとか、社交辞令だとかそういうことは一切ないだろうから、真剣な感想が聞けるだろうと、信じていました。

◆反響

結果、
「すっごく面白い」「読みごたえがすごい」「内輪感が少なく、広報誌としての機能を果たしている」「歴史的第一号を受け取ることができて嬉しい」
など、沢山のありがたい感想を頂戴いたしました。紹介したのはほんの一部で、本当はもっと沢山のお言葉をいただいています。

更に学内配布では、特撮に特別興味があるわけではないけど持っていってくれたという友人も数人。
「こうして好きなものをかたちにできるというのは良いよね」
という感想はとても印象に残っていて、今もこうして長い文章を書いたり次の企画を考えたりということをやる原動力になっています。
想像を遥かに上回る評価の良さ、感想の数々、本当に感謝しかありません。

私個人の話ですが、今までサークルや大学生活では、何においてもなかなかうまくいかないことが多く、時には強烈に批判されたり人が離れていくということも少なくありませんでした。
勿論私自身が未熟な人間であるというのが原因としては第一ですが、自分の活動が肯定されたり、一定数の人間に愛される(というと語弊があるかもしれませんが)ということが、行動のわりにとても少ない日々を送っていました。
そのために、ここまで沢山の人に自分のやったことを認めてもらって、気持ちを伝えてもらうということに慣れていないので、感想をいただくたびに、読んだという報告をいただくたびに、嬉しさとありがたさが一気にこみ上げてきて、毎回子どもみたいに大喜びして「ありがとう」しか言えなくなってしまいます。
特に「好きなものを形にできる」という、自分にとって今まで当たり前だと思っていたことが、人によってはすごいことに感じられるというのが強烈に印象に残っています。
今まで大変なことも沢山あったけど、ここまで来ることができてよかったと心の底から思います。

◆振り返り

今回の創刊号に関して、仕事の量でいえば確かに一番深く携わっているのは私ですし、本来編集者が担当する以上の仕事をやりましたが、私1人の力だけでできた本ではありません。
個人ページに参加してくれたメンバー、活動記録ページで紹介できる内容の活動をしてくれたメンバーや先輩方、そして一番は、この素晴らしい表紙イラストを描いてくれた後輩。
彼女らがいなければ、この本は完成しませんでした。



この表紙のおかげで、ネット上・学内ともに多くの方に興味をもっていただいて、ここまで評価されるものとなったと言っても決して過言ではないはずです。
冒頭に載せた、私の作ったタイトルロゴとの相性も良く、2016年の特撮サークル広報誌の創刊号の表紙としてこれ以上のものはないと思っています。

また、本文を読めばわかるのですが、こうしてサークルのメンバーで協力して何かをつくるという活動は初めてではありません。まぁ、サークルですし何かしらの活動はしていればそうなりますね。
具体的にいうと、過去にはオリジナルヒーローのスーツを作ったりなんかもしていまして、完成したときの達成感や周囲からの評価はとても嬉しいものでした。
しかし現実的には、詳細は割愛しますが、色々な事情でこの団体には向かない活動かな、という結論になってしまい、大学の特撮サークルでは大体どこもやっている「オリジナルヒーロースーツの制作」は、今後一切やらないことになりました。
本当は、他大学の特撮サークルのように、自分で作ったスーツでヒーローショーやオリジナルドラマの撮影をやってみたいし、怪獣の着ぐるみも作りたい。とは思うのですが、もうこれ以上やるのは無理だね、と判断してしまう程度には、大きなグループ制作には向かない集まりだというのは悲しいけれど事実です。

そういった過去の出来事もあり、こうして部誌が完成し、無事皆様にお届けすることができ、感想をいただけている今、「やっとできた...!」という感動で胸がいっぱいです。
3年目にして、ようやく「自分達に合った」活動を見つけられることができました。

◆流星キックの今後

学業のかたわらで、また人によってはアルバイトもしながらの活動になるので、月刊でやっていくのは難しいと思われます。
しかし次号の企画も既に考えておりますし、これ以上自分達にぴったりの活動もないので、勿論これからも続けていきます。
おそらく1〜3ヶ月に1度の不定期刊行になり、更に学祭では装丁や本文がちょっぴり豪華の特別号を販売したいです。

あとは、フチなし印刷ができていない、表紙のレイアウトがバランス悪い、特集のページが少ない...等々、反省点も相当あるので、それを改善するのが何よりも先ですね。

また、近日中に県外の方のための郵送を10部限定で無料で受け付けます。その際はサークルのTwitterアカウント(@tuad10932)でフォームを公開します。
更にその後はネット上に全ページを無料公開する予定ですので、もっと多くの方に読んでいただきたいですね。

次号以降も県内では無料配布をしますが、外部の方へは100円程度で販売に変えるつもりです。
本当はすべての方に平等に楽しんでいただきたいのですが、部費もおりない団体なのでなかなか難しく...。

少々不謹慎かもしれませんが、自分達のキャパを上回る需要があって沢山の方に楽しみにしていただけているというのは、とても幸せな悩みです。
これからも応援してくださる皆様のご期待にそえるものを、そして自分達が作っていて楽しいものをお届けしていきたいです。

応援よろしくお願い致します。

テキスタイルとは、自己表現とは。学生展示「儀礼の布」を見て

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私の通う大学の図書館二階で昨日までやっていた、テキスタイルコース四年生の展示「儀礼の布」を見てきました。
→こちらの図書館ブログで、詳細と展示の様子を見ることができます。

私は美術科テキスタイルコースから文芸学科への転科にあたり、一学年下に下がって現在もう一度三年生をやっているので、今回展示をやった新四年生は本来私の同期です。
私はこの人達と一緒に入学して、少しの間だけ、かつて一緒にテキスタイルを勉強していました。

関連記事:たまには畑仕事もいいぞ。 - 総天然色日記

こういうことを言ってしまうと身内褒めみたいで、私が身内褒めみたいなことを言うことによってまた彼らの価値を下げてしまうんじゃないか、と思ってしまうのでなかなか言いづらいのですが、この展示は最高でした。
この展示、そして彼らの制作活動の素晴らしさを正確に人に伝えるために、身内であることを悔しく思ったくらいです(私は嘘や隠し事がとても苦手なのでうまく伏せることもできず)。

今回の展示は、
自分の人生の中での節目、儀式である「ハレ(=非日常)」をデジタルプリントと伝統的な染めの技法(型染め、絞り染め、ろうけつ染めなど)を組み合わせて表現するという、テキスタイルの中でも"染め"の分野に特化した課題「儀礼の布」と、
織り機を使って縦糸と緯糸(よこいと)を交差させ布を織り、その織り上がったストライプ模様で自己表現をするという"織り"に特化した課題である「ストライプ・ストーリー」
の二種類の作品を展示していました。

「地球上で、縦と横に交差する経線・緯線の経・緯という字にはそれぞれ、"糸"という字が入っている。だから、私たちのいるこの地球そのものがテキスタイルなんです」
という、入学してすぐのガイダンスで、辻けい先生がおっしゃった言葉が懐かしいです。

新四年生のみんなは、三年前の入学当初はハッキリ言って、よくいろんな人に「真面目だね」と言われる私(自分では全くそう思っていない)ですら、本気で引くくらい真面目な性格でした。
後になって、同じ大学でも他の学科はサボりまくったり課題も適当だったり、男女関係にだらしなかったり、連絡返さなかったり、未成年の飲酒喫煙は当たり前だったり必修の単位落としたり、すべてにおいて無気力だったり...なんてのは別に驚く話ではない(もちろんそうじゃない人も多い)ということを知って、ギャップに本気で驚いたくらいです。
出会ったばかりの頃の彼らは、その真面目さが逆に災いして固定概念にとらわれて上手くいかなかったり、自分を苦しめていたり...ということもあったように記憶しています。

しかし、その真面目さ、素直さによってテキスタイルコースで学ぶべきことをほとんど零さず正面から学び、それによって「真面目である」という自分達の性質を良いものに変化させ、うまく付き合うことができるようになったのではないでしょうか。
今回の展示は、そう感じさせるような作品であり、空間ができていました。

勿論、そのようなごく一部の身内しか知らないバックグラウンドを抜きにしても、誰が見ても完成度の高い展示でした。
元々課題のコンセプトがハッキリしているのもあり、その上に乗せられた各々の想いが真っ直ぐで、心のこもったもので、更に仕事が丁寧で自分らの学んだ技術をきちんと使いこなしていたため、芸術作品による自己表現をしっかりと成し遂げていました。

また、学科の展示として本来当然のことなのですが、多くの人が抱く「テキスタイルって何をやる専攻なの?」「テキスタイルってどういう意味?」という疑問に対する答えがこの展示に来るだけでわかる、というのも素晴らしいです。

テキスタイルコースは元々は工芸コースの専攻の一部であり、現在もひと学年が10人前後と少人数制で、更に辻けい先生の指導体制がとてもしっかりとしていてテーマがブレていない、そして何より今の四年生の学年は、良い意味で真面目な人ばかり という要素が積み重なったために、このような完成度の高い展示となったのだと思います。

これだけ制作に対して当然のように誠実な態度でいることができて、何事にも一生懸命な彼らなら、絶対にこれからは幸せな人生が送れるはずです。
おそらく次の大きなイベントは卒業制作だと思うので、さみしいですが楽しみです。
あと少しの大学生活、自分の今までの四年間は精一杯やり切った、と心から思えるような作品が、このメンバーなら絶対に作れるはずだ、と今となっては外野の私は思います。
今回の展示を見ることができなかった皆さん、来年二月の卒展は、ぜひテキスタイルコースの展示も見てください。

私は残念ながら美術という媒体そのものが自分との相性が合わないと判断したために、本当に自分のやりたいことである文芸学科へ転科しましたが、この東北芸術工科大学のテキスタイルコースという場は自己表現を学ぶ上でとても素晴らしいところだ、という認識は変わりません。
逆にそういった場だからこそ、私は本当に自分に向いていること、やるべきことに気付いて、行動に移すことができたのだと思っています。
二年間だけでも、彼らと一緒にこの場でテキスタイルを学ぶことができたことを、誇りに思います。

本多猪四郎監督の故郷にゴジラ現る!「ゴジラと特撮美術の世界展」

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久しぶりの更新です。

今回は7月16日より山形県鶴岡市にて開催中の「ゴジラと特撮美術の世界展」の感想を書かせていただきます。

記事の一部に、現在公開中の映画「シン・ゴジラ」のネタバレが含まれていますので、ご注意ください!

***

この展示、実は山形市民なら誰もが知っていると言っても過言ではないフリーペーパー「やまがたコミュニティ新聞」通称「やまコミ」7月22日号の一面を飾っていました。





いつもならポストにぶち込まれているのを見てほとんど内容も確認せずそのまま捨ててしまうのですが、今回ばかりは貴重な資料として永久保存版となってしまいました...

また、同じく「やまコミ」8月12日号には、「シン・ゴジラ」劇中に登場するコンクリートポンプ車についての記述が!

注)以下の画像内の文章には「シン・ゴジラ」クライマックスのネタバレがあります



ヤシオリ作戦で新幹線爆弾・無人在来線爆弾・爆破されるビルとともに我々の心をかっさらっていった、あのポンプ車、山形市の企業である「ヤマコン」さんが貸し出したものだったそうです。

で、「シン・ゴジラ」公開1週間前に発行された、7月22日号一面をよく見ると、「ゴジラと特撮美術の世界展」一面記事の隣にはヤマコンさんの広告が...!



これは偶然だったのか、それとも...

***

と、いうことで以下、展示の感想など。

◆展示概要

「ゴジラと特撮美術の世界展」 2016年7月16日(土)-8月21日(日) 9:00~17:30(金・土は18:30まで)
一般500円/高大生300円/中学生以下無料
公式サイトはこちら

◆会場までのアクセス



私は山形市に住んでいるのですが、車を持っていないので、同じ県内でも鶴岡市は行くのが少し大変でした!
公共交通機関では、移動時間・費用・乗り換え回数ともに、バス移動が一番良い手段です。
高速バスを使って山形市から鶴岡市に入り、市バスで会場まで移動しました。

山交バス 山形〜鶴岡・酒田線 時刻表
こちらが料金・時刻ともに大変見やすいです。

市バスについては、以下「鶴岡アートフォーラム」公式サイトより引用。

JR鶴岡駅より「鶴岡市内廻り 2コース」「鶴岡市内廻り 4コース」「湯野浜温泉」「あつみ温泉」「油戸」行きのいずれかに乗車→ 「アートフォーラム前」または「市役所前」、「致道博物館」下車 〔所要時間 約10分〕
庄内交通 路線バス時刻表はこちら

会場である鶴岡アートフォーラムの近くには致道博物館もあるので、刀剣など興味のある方はこちらも寄ってみると良いかもしれません。



会場に入ると、入口からチケットカウンターまでの順路を示すゴジラの足跡が! ゴジラの展示なのにダダみたいな格好で来てしまったことにこのとき初めて気がつきました。

◆目玉はやっぱりジオラマ展示!



会場内は基本的に撮影禁止ですが、映画「ゴジラxメカゴジラ」(2002)の撮影に使われたゴジラの着ぐるみ、通称「機龍ゴジラスーツ」のジオラマ展示スペースは撮影OKです。 私は思う存分撮影するために、スマホ用のマイクロSDを購入して行きました。



ちなみに、周りに展示されているパネルでは、「ゴジラ FINAL WARS」(2004)劇中の各特撮パートのメイキングが紹介されています。

このジオラマ展示で面白かったのは、来場者の層によって撮影方法が全く異なっていたことです。
親子連れの方は観光地の記念撮影的な感じで、スマホを目線に掲げて正面からシャッターを切っていました。
一方で私たちのようなオタクは、ほとんどの人が巨大感のある画を撮るために、盗撮みたいな位置にスマホを持ちながらジオラマの周りを何周もグルグルと周り、ゴリゴリのローアングルで連写していたのです。

私は以前、NHKの「探検バクモン」円谷プロ特集回で紹介されたウルトラマンギンガSの撮影現場の様子で、巨大特撮を撮る際は、ミニチュアセットを高い台の上に組むということを知りました。そうすることによりカメラの目線が下になり、巨大感のある構図を撮ることができる!というわけです。
TVで知った撮影方法を自分も実践できたことにかなりワクワクしてしまいました。

ということで以下、映画っぽく撮れたかな〜と思う写真をいくつか載せます。







...そうなんです、特撮っぽく撮ろうとすると、ゴジラの顔が全然映らないんですよね! まあ自分の技術にも問題がありますね。またこのような展示で怪獣を撮る時のために、スマホで撮れる限りの撮影技術を上げたいです。

◆怪獣絵師・開田裕治先生のサイン会に参加



今回の目玉その2、この展示にも多数作品を出されている、開田裕治先生のサイン会の参加権を得ることができました。
開田先生の展示は何度か行ったことがあり、今までもサイン会に参加する機会もあったのですが、ちょっとしたニアミスで実は一度も行ったことがなかったので、今回初の参加となりました。
今回はキャラクター指定なし、全員初代ゴジラのイラストで統一というルールでしたが、開田先生に初代ゴジラを描いていただけるなんて一番いいじゃないですか...!

開田裕治先生の手によって、目の前で初代ゴジラが描かれていく感動!動画の撮影と掲載は先生の許可を頂いております。 pic.twitter.com/lfUEKbpKmN

— ろ紙 (@Ro_si3) 2016年7月17日
先生はサービス精神が大変素晴らしい方で、サイン中の写真や動画の撮影、またインターネット上での公開は全てOK、サイン後のツーショットも希望があれば引き受けていただき、また他にもグッズや書籍など持参したものがあればサインしてくださるという、まさに神対応。
初めてサイン色紙を描いてくださったのが開田先生で本当によかったです!

◆シン・ゴジラの制作資料も

この展示がスタートしたのも、私が足を運んだのもシン・ゴジラ公開前だったのですが、なんとひっそりとシン・ゴジラの制作資料が公開されていました。これは図録にも載っていないですし、勿論撮影禁止なので目に焼き付けるしかありません。
ゴジラシリーズ含め、長年特撮作品の美術を担当されている三池敏夫さんによる、特撮パートのイメージスケッチのようなものが何点かありました。
ミニチュアのビルの壊し方や、熱線の表現は「巨神兵東京に現る」制作時に新たに生み出した手法を使っていたんじゃないかな、と思います。

この展示にこれから行かれる方でシン・ゴジラ未見の方はまずいないと思うのですが、やはりシン・ゴジラを観てから展示に行き、その後記憶が鮮明に残っている状態でまたシン・ゴジラを観に行くのが一番いいかと思われます!

◆展示図録収録漫画「ゴジラ狂時代」

今回購入した展示図録には、西川伸司先生による漫画「ゴジラ狂時代」「ミレニアム創世記」「メカゴジラ狂時代」の三本が収録されています。
漫画家としてご活躍されている一方で、「ゴジラvsビオランテ」(1989)以降、デザイナーや絵コンテとして特撮作品に参加されている西川先生目線によるドキュメンタリー漫画です。

私はこれを読んで、ゴジラシリーズの作品ひとつひとつが良いものを作ろうという現場の人達の愛と努力の結晶であるということを改めて知りました。
漫画全体は、ややコミカルに明るい雰囲気で描かれているのですが、その端々に当時の関係者の皆さんの仕事への真摯な思いが滲み出ていて、どのコマを読んでいても涙ぐんでしまいます。
特に、ミレニアムシリーズの数作品でゴジラのスーツアクターを担当されていた、喜多川務さんの語る撮影へのプレッシャーや演技のこだわりには胸を打たれました。

元は少年誌に掲載されていた漫画ということもあり、読者にわかりやすい表現に置き換えたり、漫画では描かれていない部分も現場には沢山あったとは思います。
しかし、作品に携わる全ての人が必死で働いて、そうやってシリーズの歴史が紡がれているということを、この先生の漫画から改めて教えていただきました。


◆展示全体の感想

今回の展示は、個人的に「楽しい」というよりも、じわじわと感動が心の中からにじみ出してきて、感慨深い気持ちになる...そういった内容でした。
勿論、開田先生のサイン会や、ジオラマ展示の撮影、また各作品のメイキング資料なんかはとてもワクワクして、楽しい気持ちになったのは事実ですが、やはりそれだけで終わらないのがこの展示です。

私が行ったのは展示開始二日目ということもあってか、客入りはそこそこあり、親子連れも珍しくはありませんでした。
てっきり、ゴジラシリーズはもう自分のようなマニアや、小さいときにゴジラを見た記憶のある人しかほとんど興味をもたないコンテンツで、今の時代の子どもたちは知らない子も多いんじゃないか、と思っていたので、これは意外でした。
お父さんがかつて怪獣少年だったのか、それともお子さんのほうからゴジラに興味をもったのか。その子は、シン・ゴジラのことを知っているのか。あのポスターを見ても、映画館に行きたいと言うのか、言ったのか...。
シン・ゴジラが公開され、これだけ日本中でヒットしている中、こう言うのは尚更なのですが、私が悲観していたよりもずっと、ゴジラは今でも多くの人に愛されている存在で、きちんとそれは次の世代にも受け継がれているようです。

展示室に入ると、生頼範義先生による平成ゴジラシリーズのポスターイラストが目に入ります。
公開当時、ゴジラには微塵も興味がなかったためにポスターを見た記憶すらない私にとっても、生頼先生のイラストには当時の時代そのもの、そしてゴジラシリーズが子ども達に与えていた夢が全て詰まっているように見えます。
それを見て、「ゴジラって、ずっとこういう存在だったんだな。沢山の人に大切にされてきたんだ」ということを改めて感じました。

また同じ会場で、この鶴岡市で生まれ、多くの東宝特撮作品を手がけた、故・本多猪四郎監督にフィーチャーした企画展時をやっていたというのも大きいです。
特撮系の展示、あるいはそういった話題で、特技監督である円谷英二監督に比べて触れられる機会がやや少ないように感じられる本多監督ですが、改めて彼の映像制作への想い、そして根底にある戦争体験を知るという意味で今回の展示は重要でした。

あと数日で展示期間は終わってしまいますが、シン・ゴジラで初めてゴジラシリーズに興味を持った人にも、往年のファンの方にも見ていただきたい内容です。

***

関連記事:「成田亨 美術/特撮/怪獣」青森県立美術館に行って来た。

シロイルカがマジでかわいいからみんな見てほしい

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海の生き物の中で一番好きなのはクジラです。
タイトルにシロイルカと書いてありますが、イルカはクジラの仲間です。イルカとクジラの違いは大きさだけで、実は同じ生き物です。

以前、「特撮その他、コンテンツ以外の話もできるようになれる人間にならないとなぁ」と思い、ツイキャスでクジラについて1枠ぶん使って語りました。以下のリンクは録画公開のログです。
http://twitcasting.tv/ro_si3/movie/296956469
配信前は、生物学を学んでいるわけでもない、図鑑に書いてあることしか知らない自分が30分も持たせることができるのかと不安でしたが、実際に話してみたらすごく楽しくてコメントの反応もとてもよく、私自身もっとクジラについて知りたいとこの時改めて思いました。


先述の配信でも少し触れたのですが、私はイルカと呼ばれているものの中ではシロイルカが一番好きです。
今回はシロイルカの魅力について語っていきます。

・頭の形が独特



シロイルカは一般的にイルカと聞いて連想する種、つまり体が黒っぽいイルカと比べて頭の形に特徴があります。
マッコウクジラのように頭が出っ張っているのです。
これはメロンという器官で、ハクジラの仲間はみんなこれを持っています。
ハクジラの仲間は超音波を使うエコーロケーションと呼ばれる手段を使って海の中で生活しているのですが、メロンはエコーロケーションを行うために必要な器官です。

また、そもそもの顔の作りが笑っているように見えて可愛いんです。
他のイルカと比べて口の先があまり尖っていないので、顔の印象が違います。


・やわらかい



シロイルカはメロンが大きく、しかも自分の意思で変形させることが可能で、水族館のショーなんかではその様子を見せるパフォーマンスもあります。
しかもこのメロン、変形自在ということもありめちゃくちゃ柔らかくて、Youtubeで動画を検索するとその様子を見ることができます。
また、メロンに限らずシロイルカは体全体が脂肪に包まれており、とても柔らかいです。
シロイルカは北極圏で生活しており、沢山の氷で傷ついてしまう身体を保護するため、また寒さに耐えるために15センチほどの脂肪の層に身体を包んでいます。

私のイチオシはこの動画、



特にこの瞬間が大好きです。



シロイルカが水槽のガラスに顔をくっつけることによってメロンが変形していることがわかります。この様子がとてもかわいい...!

ただ、少し心配なのが、この動画に登場するシロイルカはやたらと人間に向かって威嚇している様子が多いことです。



イルカが人間などに向かって突然大きく口を開けるのは、「これ以上近寄るな!」という威嚇の意味があるとされています。
このYoutube動画はいくつかの動画を編集してまとめているため、この動画のシロイルカが全て同一個体かどうかはわかりませんが、これだけ頻繁に威嚇の様子が収められているということは、水族館で生活する上で結構なストレスがかかっているのではないか、と心配してしまいます。
しかしネット上では(全く別の水族館での話ですが)こんな記述もありました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1112723676
>暇を持て余したイルカたちが観客を驚かせて楽しんでいることがわかりました。ただ静かに見ているだけの観客は、
>イルカたちにとってはつまらない存在だったのです。

クジラの仲間は好奇心旺盛で人間に優しいため、この記事に書いてあることも合っているかもしれませんが、真相は不明です。
そもそもこの投稿自体が古く、元のソースが削除されているため現在は確認ができない状態です。
自分でもある程度の根拠に基づき、自分なりの見解を語れるくらいの知識と思考力が欲しいものです...。


・大きい

シロイルカは、全長5メートルほどと、イルカと呼ばれている種の中では身体が大きいです。
この「そこそこの大きさ」にも個人的には可愛らしさを感じます。
元々全身が真っ白という膨張色で、なおかつ身体が大きく、更に頭の形が丸っこく、全身が脂肪に包まれているため、ふわふわして優しいような印象があります。



生まれたばかりの赤ちゃんは1.2〜1.8メートルととても小さいです。親子仲良く泳いでいる様子に癒されます。


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以上が私が個人的にシロイルカに感じている萌えポイントでした。
他にも、野生のシロイルカは春になると川に集まり、冬の間に氷で傷つきボロボロになった肌を脱皮する...といった行為に、健気に一生懸命「生きる」という概念を強く感じ、当たり前だけどただかわいいだけじゃないんだよなぁ...と感慨深くなったり、
ホッキョクグマなど天敵を欺くために白い身体をしているのですが、実際にシロイルカの生存率はとても高いことを知ってとても安心したり、
その割に子供はかなり黒っぽい身体をしており、生まれてから10年ほどかけてやっと白い身体になるのは、大丈夫なのか?幼い子供こそ安全な白い身体であるべきでは?と心配になったり、
水中に潜ってしまったばかりに、大量の流氷に閉じ込められて顔を出すことができず死んでしまう個体もいるという事実を知ってとても悲しくなったり...等
まだまだ語りたいことはあるのですが、自分の知識不足ということもあり、今回はこの辺りに留めておきたいと思います。


飼育されているシロイルカは現在、日本では鴨川シーワールド、八景島シーパラダイス、島根県立しまね海洋館AQUAS、名古屋港水族館の四箇所で会うことができます。
どの水族館もショーをやっていて、柔らかい頭に実際に触れたりといった体験もできるはずです。
私は東北に住んでいるため、なかなか行くのが難しいのですが、国内なので実現不可能な話ではないですし、いつかお金を貯めてシロイルカに会ってみたいものです。

更に、つい最近のニュースなのですが、私の実家のある北海道の湖にシロイルカが迷い込んだようです。
北極のベルーガ、北海道でひとりぼっち 遊び相手は漁師:朝日新聞デジタル

このシロイルカは現在一般人が会いに行くことは許されていないそうで、ちょっと残念にも思ったのですが、
もし仮に許可されていたら、ストレスがかかってしまったり合わない食べ物を与えられたりして大変なことになるかもしれないですし...とても正しい判断と思われます。

また、シロイルカは全身が白という大きな特徴があり、水族館の人気者ということもあってか、立体物もそこそこ制作されています。
その中で、特に私がいつか手に入れたい二つを紹介します。

「ActivePillow水夢くん シロイルカ」



全長1.2メートルなので、シロイルカの子供と大体同じくらいの大きさですね(先述の通り、シロイルカの子供は真っ白ではないですが...)
私はシロイルカの魅力を知ったその時から、その柔らかい身体に触れたい、抱きしめたい...あわよくば抱きしめながら寝たい と思っているのですが、
イルカ・クジラは普段水中で生活しているため、長時間陸上にいると自重で肺が潰れて死んでしまいます。また、肌が乾いて火傷のような状態になってしまいます。
なので私のその夢はシロイルカがシロイルカである限り永遠に叶わないのですが、抱き枕だったら感触こそ違えど、思う存分愛でられるし安眠できるのではないでしょうか。
というかこの抱き枕、シロイルカはグレーも販売されているので、かなり"わかっているな"と思います。


「アニア シロイルカ」



こちらはタカラトミーが出している動物のリアルフィギュアシリーズです。

日本製かつ、子供向けの商品なのに、こういうグッズにありがりな「ダメな方向の"媚び"」がほとんど見られず、大まかな印象はかなり実物に忠実なところが好感度が高いです。
特徴的な歯までしっかりと造形されていますね。
また、「それぞれの動物の特徴を直感的にとらえる」というコンセプトのアニアで、頭がプニプニしているという最大の特徴をもつシロイルカを立体化した上で、プラスチック製という商品の特性上その特徴を再現できないため、他の海獣同様"口の開閉と尻尾の可動"に留めている点はかなり割り切った決断だなぁ...と思いました。
この「アニア」シリーズ、一体600円と怪獣ソフビ程度のお手軽な値段で入手でき、かなり出来が良くラインナップも豊富...これは一度手を出してしまうと大変なことになるやつですね。すごく欲しいんですけども。

+++

以上、今回はシロイルカのお話でした。
動物について調べたり、そこで得た知識を人に紹介したりするのはとても楽しいので、これからも続けていきたいです。
また、ツイキャスの時に気付いたのですが、創作物である特定のコンテンツに比べて実在する動物の方があまり相手を選ばず語れますし、その対象について詳しく知らない、今まで興味を向けていなかった人も食いついてくれますね。
コンテンツの話は、どうしてもその作品を見ていることが前提となってしまうのが実は難しいところです(もっと語るスキルがあれば未見の人にもある程度面白く説明することはできるのでしょうが...)。
いろんなジャンルの話を誰が聞いたり読んでも面白く感じられるようにプレゼンできるようになるのは今後の課題だなぁと思いました。

シロイルカはどんな仕草をしていても楽しそうでかわいくて癒されるので、これを読んで興味を持ってくださった方は是非Youtube等で動画を探してみてください。
動画を見て、水族館で飼育されている個体と野生の個体の違いなんかを探すのも楽しいですよ。

特撮雑誌「宇宙船」を20年前と現在で比較してみた

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特撮というジャンルが好きな人でしたら、一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
SF・特撮マガジン「宇宙船」。
もとはソノシート絵本など子供向けのアニメ・特撮書籍を出していた朝日ソノラマが1980年に創刊したのですが、2007年に朝日ソノラマが解散してからはホビージャパンが権利を譲り受け、現在に至ります。
長い歴史の中で何度かの休刊と刊行ペースの変更がありながらも今もなお続いているということは、この雑誌がそれだけ多くの読者に愛され、支えられているということなのでしょう。

私は特撮系の書籍なんかは特に、その作品が公開されていた当時の様子を知ることができるので、昔出たものを読むととてもワクワクします。
雑誌はその時代の空気感を当時の形そのままで知ることができる貴重な資料だと思っているので、ブックオフで宇宙船のバックナンバーを買うのがささやかな楽しみです。

しかし、特撮と言っても実はジャンルが更に細分化されているため、分類上同じ特撮作品でも全く知らないものもある、というのは特撮あるあるでしょう(中には全て網羅している素晴らしい方も沢山いらっしゃいますが...)。
私なんかはまさにそれで、怪獣映画が好きであるため、つい最近までの怪獣映画氷河期はたまに宇宙船を立ち読みする程度で、全く買っていませんでした。
そのため、バックナンバーを持っているといっても非情に時代に偏りがあります。

バックナンバーは、とりあえず自分の好きな作品が特集されていたら買う、といったようにしているのですが、一番好きな怪獣映画「ガメラ2」が表紙だからという理由で買ったvol.77 1996年夏号がちょうど今から20年前に出されたものだということに気づき、どうせならこの雑誌が20年でどのように変わったのか比較したら面白いんじゃないか、と思い、vol.153 2016年夏号を購入しました。

ということで今回は、宇宙船vol.77 1996年夏号とvol.153 2016年夏号の比較、同時に特撮というジャンルがこの20年でどう変化したかということを紹介していきます。

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1.表紙デザイン



タイトルロゴが筆文字からタイポグラフィに変わり、サイズも表紙の幅いっぱいに配置できるほど大きなものになっています。
また、表紙に使っているビジュアルの全体を見せるためか、vol.153はロゴを半透明にする工夫がなされています。
更に、vol.153のほうが表紙の情報量が多く、この本で扱っている作品が表紙を見ただけでほぼ全てわかるようになっている上、表紙の「仮面ライダーゴーストムゲン魂」にかけたキャッチコピーが大きく配置されています。



バックナンバーを調べてみたところ、筆文字ロゴから現在のスタイルに変わったのはvol.141 2013年夏号からのようです。
表紙にも大きくRENEWALの文字が書かれており、この号から方針が変わったことが伺えます。
表紙ではヒーローの変身後の姿を扱うことが多かった宇宙船で、リニューアル一発目にキョウリュウジャーの変身前の役者全員を大きく扱ったのは大胆な決断ですね(役者が表紙を飾ること自体はこれが初めてではありません)。

また、更に調べたところ、具体的な号数のタイミングはわかっていませんが、宇宙船のタイトルロゴは何度か変わっていることがわかりました。



1980年の創刊号からvol.45 1988年12月号までの隔月刊だった時期は昭和のマンガのタイトルのような斜めのデザイン
vol.46 1989年2月号からvol.63 1993年冬号の季刊へ移り変わった時期はウルトラマンや仮面ライダーの番組タイトルロゴを連想させるデザイン
vol.64 1993年春号からvol.99 2002年3月号間の再び隔月刊へ移り始めた時期までは筆文字
vol.100 2002年5月号からvol.119 2003年11月号の間はシンプルなゴシック体
vo.120 2008年春号からvol.140 2013年春号までの復刊以降は再び筆文字
vol.141 2013年夏号以降は現在親しまれているロゴ

といった流れになっていました。
ちなみに、vol.150 2015年秋号の表紙では150号記念ということで最初期のロゴが使われています。



閑話休題。

よく見るとvol.153は裏表紙も表紙の延長として使われており、仮面ライダーゴーストに次いでウルトラマンオーブが大々的に扱われていることがわかります。



こういった裏表紙の使い方は、個人的には初めて見ました。しかし、手に取った上で裏も見た人にしかわからないので、従来の雑誌の表紙のように、表紙1に一緒に載せるほうがわかりやすい気もしますが...

vol.77の裏表紙は特撮関連のCDの広告です。雑誌の裏表紙は広告という印象がやはり強いですね。表紙・特集に合わせてガメラのサントラが大きく扱われています。

2.目次



目次はどちらも巻末に掲載されています。
手元にあるので確認したところ、子供向け特撮雑誌である講談社の「テレビマガジン」2016年8月号も目次は巻末にありました。



個人的に雑誌の目次は冒頭にあるほうが馴染みがあるので少し違和感がありますが、よく考えると集英社の「少年ジャンプ」など漫画雑誌も基本的に目次は巻末にありますね。

しかしvol.153はなぜか目次の後に仮面ライダー鎧武の怪人「ロード・バロン」の特写が4ページもあるため、目次が少し探し辛いです。

そしてvol.77とvol.153、注目すべき点は目次のレイアウトの違いです。
vol.153は淡々と機械的にコンテンツを並べているのに対し、vol.77はこの恐ろしいまでの凝ったレイアウト!



カラーページとモノクロページを分けているところもとても特徴的ですが、ページ上半分「P28 ジャイアント・ピーチ」と「P30 4C無法地帯」の間で謎の段落ズレをあえて取り入れ、画面に大きく動きをつけています。
中央に大きく配置されている横書きの「1996 SUMMER」の帯から上下に縦書きの「カラーページ」「モノクロページ」が伸びているのもかなり大胆なデザインというか、なかなか思いつかないし思いついても実行する勇気は私には無いですね...。
その上で雑誌タイトルと号数はページ右端に縦組みで横書きという豪快さ。なんなら「CONTENTS」というこのページが何のページであるかということを示す重要な要素すらも縦組みで配置されています。
更に、空いたスペースにはすかさずモスラとウルトラマンティガを配置という文字通り隙の無さ。
しかし表紙でも紹介されており、本文でもガメラのページの次に特集されているモスラは十分にわかるのですが、だったらもう一つはティガではなく七星闘神ガイファードにすべきだったのでは...?という疑問もわいてしまいますが...。

vol.77の目次はとにかくダイナミックで動きのあるレイアウトをしていて、良い意味でうるさくてゴチャゴチャしているんですよね。そのため、とてもワクワクさせられます。
私は、こう言った「ゴチャゴチャ感」こそがとてもオタク的だと思います。オタクは、沢山のことを知っていて好きなものが沢山あって、物理的な意味でも部屋に沢山の本やグッズ、映像ソフトがあり、それがどんなに整頓されていたとしても「ゴチャゴチャ感」は拭えないということがほとんどではないでしょうか。もしくは、話の展開も部屋の片付けも、オタク的にはとてもシンプルで情報が少ないつもりでも、そうでない人にとっては十分なんだかマニアックで情報が多いと感じられることは珍しくないと思います。
また、特にこの特撮というコンテンツは、本来子供向けに制作されたものを大人が楽しんでいるという構図が前提にあります。そのため、私のような例外もたまにいますが、基本的に多くの特撮マニアは子供のときに特撮を見ていて、そのときの気持ちの延長で大きくなっても特撮を愛しています。
宇宙船vol.77の目次ページからは、そういった子供時代の気持ちを呼び覚ますような「ワクワク感」、おもちゃ箱のような賑やかさが感じられます。


3-1.本文 - 印刷

vol.77はカラー・モノクロ混在でカラーページのほうがやや多く、またモノクロページの中でも白い用紙と黄色い用紙の二種類を使い分けています。





vol.153はフルカラーで、全ページ同じ用紙です。

3-2.本文 - 構成

vol.77はカラーページが限られているということもあってか、冒頭の特集ページでは1作品あたりのページ数がとても少なく、短いページ数でジャンルも制作会社も様々な作品がどんどん紹介されていきます。





そのため、巻頭のカラーページをパラパラめくって流し読みするだけでも、この時期に制作・公開されていた作品の情報を沢山得ることができます。

モノクロページでは編集部による作品レビューや脚本家・監督のインタビュー、作品データベースといった大変ありがたい情報と、ハガキ投稿によって構成された読者参加企画の二種類がメインなのですが、
面白いのは、そういったスタッフのインタビューが載っているのと同じページに読者の投書やイラストが載っているという点です。
いわゆる「読者のおたより」コーナーは先述の黄色いページに集約されているのですが、それとは別に脚本家の伊藤和典さんのインタビューの下に「読者のガメ論」といったコーナーが設けてあったり、



ウルトラマンゼアスの怪獣デザイン画の隣に読者によるウルトラマン語りが載っていたりと、「読者もこの雑誌を作り、特撮を支えている一員」という印象を強く受けるような構成になっています。
また、とにかく文字が多く、カラーページも1ページあたりの写真1枚1枚が小さめのものが沢山載っているため、濃い情報が圧縮されています。

vol.153は巻頭から16ページに渡り仮面ライダーゴーストの特写を5種類掲載し、その後はほとんど役者や監督へのインタビューです。
インタビューは全て見開き1ページ、写真が大きく載っているのでページを開くだけで誰に対するインタビューなのかわかります。



vol.77にもインタビューは沢山ありましたが、文字数があまり多くないものを1ページに何本かまとめたり、逆に何ページも使ったりとフォーマットは統一されていませんでした。
しかしこれは言い換えると、vol.153は見開き1ページでの役者ときどき監督インタビューが多いため、どのページを見ても印象がほとんど変わらず、あまりに大人しすぎると感じるのが正直な感想です。
これは特撮作品そのものにも近いことが言えるかもしれませんし、言ってしまえば個人レベルの好みの問題なのですが、vol.153のページレイアウトは洗練されすぎるが故に雑誌全体のトーンがあまりにも統一されすぎています。私はもっとカオスな感じや目次の話題でも触れたゴチャゴチャ・ワクワク感、泥臭さといったものを求めてしまうので、寂しく感じてしまいました。

更に気になったのは、vol.77は先述のとおり短いページ数でテンポ良く多くの作品を扱っているのに対し、vol.155は巻頭から実に45ページの間ずっと仮面ライダーゴースト一本でぶっ続け、更には46・47ページは見開きでVシネマ作品の仮面ライダーマッハ/ハート、更にページをめくると仮面ライダーアマゾンズが4ページに渡り紹介されています。
つまり、宇宙船vol.153は、実質51ページに渡り、仮面ライダーのみを扱っています。
そして、52ページから63ページは動物戦隊ジュウオウジャー、64ページから67ページの間は手裏剣戦隊ニンニンジャーを扱っているため、東映の作品だけで雑誌の前半を使っています。
これはvol.77との大きな違いで、vol.77と同じノリで読んだら延々と仮面ライダーの記事が続き、かと思えばいつの間にか戦隊の記事になっているので(ページ構成のカラーが似ているため記事が変わったことに気がつきにくい)、「この号は東映作品しか取り扱ってないのか?」と思ってしまいます。

後半になるとサンダーボルトファンタジーやシン・ゴジラ、貞子vs伽倻子、またX-ファイルやスーパーガール、ゴーストバスターズなど、国内外を問わず特撮作品を幅広く紹介している点はvol.77と変わらず、「SF・特撮マガジン」の名にふさわしいと言えます。

そしておそらくvol.153では仮面ライダーゴーストの次にプッシュしたいのであろう作品がウルトラマンオーブですが、これは広告を含めると16ページ、更にオーブ以外のウルトラマンの記事も含めると22ページです。
実は、仮面ライダーゴーストの特写を除いたページ数が18なので、割り当てられたページ数は実はゴーストとあまり変わらないどころか、むしろオーブのほうが少しだけ多いのです。
にも関わらず、vol.153はウルトラマンオーブの印象はとても薄いです。おそらく制作会社ごとにわかりやすくまとめるといった配慮からこうなったのかと思われますが、これだけ延々と東映作品を扱ってきた上で全体の後半に入ってから初めて紹介されるものを、果たして裏表紙で主張するほど大きな特集と呼んでいいのだろうか?と疑問に思います。
しかし仮面ライダーゴーストは現在TV本編がクライマックスである上、vol.153が発売された時期は劇場版の公開があるために絶好のアピールチャンスであり、更にvol.154が発売される予定の10月にはもう特撮ファンの興味は次回作の仮面ライダーエグゼイド一色であるため、ゴーストを大々的に扱うということ自体は雑誌の作り方としてこれ以上正しいものはありません。
その上、仮面ライダーシリーズは全国で放送されており、ウルトラマンオーブはインターネット配信こそあれど一部の地域では放送されていません。
そういった事実から客観的に考えてみても、仮面ライダーゴーストを45ページに渡り特集し、同じシリーズであるアマゾンズやドライブサーガを一緒に紹介し、制作会社と放送枠が同じスーパー戦隊シリーズを続けて扱うことは間違ったことではないはずです。

しかし、そうなってしまったことにより、vol.77を読んだときに感じたテンポの良さ、間髪入れず様々な作品の情報が入ってくる面白さはvol.153では失われてしまいました。
これにはいくつかの理由が考えられます。

・vol.77はカラー・モノクロ混在であるのに対し、vol.153はフルカラー

vol.77はカラーページの数が限られているため、制作の際は本当にフルカラーで見せたいもの、本当に目立たせたいものの厳選が必要です。
そして、限られたカラーページの中でできるだけ多くの作品を紹介するため、1作品ごとの割り当てられたページ数は少ない上、1ページに詰め込まれている情報はとても多いです。
また、vol.77は特集ごとのまとまりよりもカラーページで扱う作品の数を優先しているため、同じ作品でもインタビューや解説など、ヴィジュアルで見せる必要のないものは何10ページも後のモノクロページに回し、同じ作品でもカラーページで扱うは劇中写真やスチル、最新情報といったヴィジュアル重視のものや優先してアピールしたいものに留めています。
そのためにカラーページでは度々、このような「続きはモノクロページで」といった旨の誘導がされています。制作会社どころか同じ作品でもページが飛び飛びなのです。



つまり、私がvol.77を読んだ時に感じた「次々と短い間隔で紹介作品の変わるワクワク感」は、限られたカラーページの中でいかに多くの作品をカバーするか、といった編集側の工夫によるものだったのです。

それに対しvol.153はオールカラーであるため、vol.77で見られたような節約技めいた工夫の必要はありません。序盤の特集にどれだけ尺をとっても、文字が記事の半分以上を占めるインタビューをカラーページにおいても、カラーページの無駄遣いにはならないためです。
なのでわざわざ同じ作品でもページを飛び飛びにする必要な全くなく、制作会社やシリーズごとにまとめたほうが違和感がないためにこのような構成となっています。

・そもそもの判型が写真に向いている

宇宙船はvol.77もvol.153もA4変形とサイズが大変大きく、こういった判型の雑誌はヴィジュアルで見せることに向いています。
それは特撮以外のジャンルでも一緒です。私は高校生のとき、特撮関係ではなく好きなバンドの話をする仲間とTwitterで交流しており、新曲がリリースされると音楽関係の雑誌を購入していました。
音楽雑誌は特撮雑誌よりも種類があるのですが、当時のフォロワーが「PATi-PATiはいつも写真が大きくて多いので嬉しい」とツイートしていたのを覚えています。



PATi-PATiもA4ワイドというとても大きい判型なので、写真を効果的に見せるのにとても向いているということがわかります。

また、単純に20年前と比べて現在のほうがカメラの解像度も印刷の技術も上がったため、大きな写真をより美しく見せることができます。
そのためにvol.153のほうが1ページあたりの写真が大きく、そうなることによって同じくらいの情報量でも1作品あたりの割り当てられるページ数が多くなるのも納得がいきます。


・vol.153はvol.77に比べると読者投稿欄が極端に少ない

これは主に「vol.153のページレイアウトは洗練されすぎるが故に雑誌全体のカラーがあまりにも統一されすぎている」といった点に関係があります。
vol.77では数え切れないほどのページ数があり、度々他の記事の隅にも登場しているためなかなか存在感のあった読者の投書が、vol.155ではなんとたったの2ページしかありません。
その上、読者投稿欄はあくまで読者投稿欄として別枠で用意された範囲でやっているのみで、他の記事と同じページに出張していたり、製作陣と視聴者の意見を照らし合わせて読んだり...という構成にはなっていません。
そもそも、vol.77は文章での投書の掲載がとても多く、他にも読者の作った立体造形物やイラストなど、様々なものを扱っていたのですが、vol.153では読者からの投書はイラストのみの掲載となっています。
これは前述の、雑誌全体がヴィジュアルで見せることに特化しているという特徴を考え、イラスト一本に絞ったのかもしれません。


・それぞれの時代で特撮というジャンルの流れが全く違う

vol.77の発売された1996年は、仮面ライダーシリーズが完全にストップしており、ガメラ2の公開と平成モスラの制作、といったように国産怪獣映画が近年に比べて活発な時代だったことが伺えます。
しかし、TVでは七星闘神ガイファード、超光戦士シャンゼリオン、ビーファイターカブト、激走戦隊カーレンジャーが放送されており、ヒーロー特撮はむしろ今より多い時代でした。
その中でもなお怪獣映画であるガメラ2とモスラが大々的に扱われているのは、当時は今よりも怪獣映画に興味を向ける人間が多かったということなのでしょうか。

vol.153の発売された時期はシン・ゴジラがギリギリ公開前でした。またシン・ゴジラ自体がかなり徹底した秘密主義で、公開前はファンから不満の声が出るほどの露出の少なさであったということを考慮しても、vol.153でシン・ゴジラは4ページでとてもアッサリ紹介されていて、思わず「これだけ?!」と言ってしまったほどです。樋口真嗣監督のインタビューはかなり突っ込んだところまで語られており、読み応えはあるのですが、正直な話、雑誌全体で見るといわゆる「扱いが悪い」という感想を抱きます。

更に10月に発売されるvol.154は、表紙画像こそまだ公開されていないものの、公式サイトでは「『仮面ライダーエグゼイド』大特集号!!」と発表されています。
この20年で特撮というジャンルの流れが大きく変わり、編集部の方針もとにかく仮面ライダーを最優先しよう!といったように変わった、つまりそれだけの需要があるということなので、私が想像している以上にシリーズごとのファンの人口が違う、ということなのでしょうか(勿論私も仮面ライダーエグゼイドの放送を今から心待ちにしているほどには仮面ライダーが好きですが...)。


3-3.本文 - コンテンツ

先ほどまでは、本文の中でもあくまで雑誌の構成に目を向けて語っていました。
ここからは、具体的な内容、記事で主張していることなど、コンテンツにフォーカスして更に細かく語っていきます。

まず、vol.153の最大の特徴が「特写」。この号に限らず、近年の宇宙船はこれを一つの売りにしている印象があります。
先述の通り、撮影・印刷技術が大幅に上がったために実現できている企画ですね。



本編撮影に使用されたスーツを様々なポーズ・角度で撮っているため、デザインの細部や使用素材の質感が手に取るようにわかります。
イラストやコスプレ造形、フィギュア制作などの二次創作活動をされている方にとってはとても役立つ資料ですし、そうでなくとも純粋に美しく、見ているだけでとても楽しいです。
仮面ライダーゴーストムゲン魂のヘルメットは綺麗に処理された前後の分割線までうっすら見えるほどです。
また、こういった特撮作品で使用されるヒーローのスーツは、基本的に戦闘シーンで活躍するため、映像の中で素早く動いている印象が強いです。
そういったスーツを、大きな写真にブレもなく収められている状態でじっくり見るという行為自体が新鮮で、不思議な感覚があります。

そして同じくヴィジュアルで見せているのがインタビュー記事ですが、個人的にはこれに少し疑問があります。
現行作品の役者へのインタビューを載せている特撮雑誌は宇宙船以外にも東映ヒーローMAX、HERO VISION、スーパーヒーロータイムがあり、現在は休刊していますが特撮ニュータイプというものも数年前まではありました。
国民的シリーズ「仮面ライダー」の俳優ともなると雑誌だけでも数え切れないほどのインタビューを1年間で受け、更に劇場パンフレットや公式ガイドブック等にもインタビューやグラビア写真が載るでしょう。舞台挨拶やイベント、ブログやSNS、映像特典などでも作品や役について語る機会はあります。
つまり、役者のインタビューやグラビア写真は他の雑誌でも見る機会はいくらでもあるのに、わざわざ宇宙船でもやる意味が私にはあまり感じられません。
そもそも「HERO VISION」というタイトルの時点で俳優を中心に扱っていることがわかる雑誌がある上で宇宙船も似たことをやっているのに違和感があります。

俳優が好きで特撮を見ている人や、雑誌全体で俳優を推すこと自体は何も問題ないことですし、それだけ需要があるということなのですが、他の雑誌も散々やっているのと同じことを宇宙船のメインコンテンツにしてしまうのは本当にそれでいいのかと思います。
インタビューの内容も、撮影の時にどんなことがあったとか、どんな心境で演じているとか、特定のエピソードについての質問だとか、あまり突っ込んだものはなく、悪い言い方をすれば誰でもできる質問ばかりです。
そもそも、役者として魅力があることと、インタビューで面白いことが語れるかどうかということは全く別で(もちろんインタビュアーの技量によるところも大きいですが)、人気作品の役者にインタビューをしまくる=面白い記事ができる とは限らないはずなので、その辺りが少し甘いかなぁと感じました。

また、全ページカラー印刷であるというのもvol.153の特徴ですが、これは別にカラーじゃなくてもいいだろうというページがそこそこあります。実はvol.153はvol.77の二倍近くの値段なのですが、カラーじゃなくてもいいページはモノクロにして従来のカラー・モノクロ混在印刷とし、その分値段をもう少し下げられないかと思います。

vol.77の特徴は、先ほども少し触れましたが読者投稿欄の多さ、それも文章での投書がとても多い点です。この辺りはかつて刊行されていたコンテンツ系雑誌「月刊OUT」に通ずるものがあります。
また、作品の感想や考察といった"語り"に加え、自主制作映画の宣伝や同人サークルのメンバー募集、中古グッズの買取情報などといったものも見られ、作品そのものについてだけではなく、当時のオタク達がどんな活動をしていたのか、リアルタイムではどのような反応があったのかといったことが文字通り手に取るようにわかります。






こういった生きた情報が載っているほうが読んでいて楽しいですし、何年経っても資料として十分な価値を発揮するので、個人的には復活してほしいです。
しかし、そもそも現在はインターネット掲示板やSNSがほぼその役割を果たしており、雑誌というメディアの役割が変わったということも考えられるので、これからは他の雑誌でもそういった読者の参加する枠はどんどん少なくなっていくのかもしれません。



+++

まとめ

同じ雑誌でも20年経つとここまで大きく変わるのか、という驚きがまずありました。
長年特撮ファンをやっている方と話すと、「昔の宇宙船のノリが恋しい」「近年すごく内容が変わった」といった意見はよく聞きますし、自分も数冊読んで「なんか違うなぁ」とは思っていたのですが、実際に分析してみると1万字を超えるほど語れる内容になるとは思いませんでした。
私自身は宇宙船のバックナンバー(主に90年代〜00年代前半)を数冊所持している程度で、特撮作品自体もそこまで多くのものを見ているわけではないので、詳しい方が語るともっと沢山の発見があると思われます。

こうして比べてみても、やはり私は今回でいうvol.77、昔の宇宙船のほうが好きです。それは私が仮面ライダーゴーストよりもガメラ2が好きということを差し引いても言えることです。
やはり、何度も触れていますがページをめくるたび得ることのできるワクワク感が段違いで、とにかくその情報の濃さに圧倒されるからです。しかも、情報量が多く濃いからといって胃もたれすることもなく、ちょうど良いバランスで楽しむことができる点が素晴らしいです。

また、私は作品をひとつ観賞したら自分なりに考えた後は必ずSNSや掲示板を見て、同じ作品を見た人がいないか探します。他の人の感想や考察を読むことがとても好きで、そういったものを見るとまた作品をもう一度見たくなるからです。私にとって、作品を観賞するという行為は他人の感想を読むところまでがセットなのです。
そういった点でも、日本全国にいる読者の感想や持論を毎月読むことのできたかつての宇宙船は素晴らしいです。
現在は私がそうしているようにインターネットがその役割を果たしているのですが、ネット上のデータはいつ消えるかわからないですし、ノイズが多いこともしばしばあります。
雑誌への投稿は編集部を通したものだけが載っていますし、本の形をしていれば資料として保管し、いつでも簡単に見ることができるので、インターネットでの交流がすっかり定着した現代でも、文章の投稿欄は復活してほしいです。

そして投書の扱いが無くなったもう一つの理由として考えられるのは、おそらくTwitterの普及率が爆発的に上がったことにより、主に10代後半〜20代前半の若者が長文離れしてしまったことが考えられます。
Twitterの1ツイートは140文字までですが、毎回毎回140文字びっしり書くユーザーはあまりいないですし、140文字すら「長い」と感じる人は少なくありません。
140文字を読んで長いと感じるということは、140文字を自分で書くことはあまりないということです。
つまり、140文字以下のツイートでも作品の感想は共有できるので、かつての宇宙船読者のようにじっくり考えたりあれこれ語ったり...といった見方をしている読者が減っているのではないでしょうか。
私も同年代の知人に考察などを話すと、「長い」「そこまで考えるのは深読みしすぎ」と言われることがたまにあります。
勿論、中には若い視聴者でもじっくり語るのがとても好きだという人がいるというのも理解しています。自分自身や、Twitterのフォロワーの多くがそれに当てはまるからです。そして、別にTwitterに馴染みのない世代の方でも長々と語ることをしない人だっているはずです。
しかし、大きな流れで見て、長文慣れしていない人やシンプルな感想で済ませる人、作品の表面的な情報だけを受け取って消費してしまう人が多くいるのは事実です。
そういった時代の流れに合わせて雑誌の構成が変わったということは十分に考えられます。
毎年恒例の、新ヒーローのデザインや設定が公開される度にファンが大騒ぎする現象にも同じことが言えますが、昔のほうがよかったというのは思い出補正など抜きに事実であることはとても多いです。
しかし、作っている側は商売でやっているので、メインターゲットの心にどれだけ訴えることができるのか、世の中全体の雰囲気から察するに今はどんなものがマッチしているのか、といったように、同じものでも時代に合わせて形を変えなければ生き残ることはできないため、変わること自体は悪いことではないのではないでしょうか。
(そもそも、当時の価値観で作ったものと現代の価値観で作ったものを自分の主観というひとつの価値観で比較するという行為自体が矛盾してしまうのでは?と今気付きました。楽しかったのでいいのですが...)

また、宇宙船の傾向が変わったからなのかそうでないのか、近年では「特撮秘宝」をはじめとする洋泉社の書籍にかつての宇宙船の雰囲気を感じます。
洋泉社の書籍は、かつての宇宙船よりも更にディープでどこまでも濃く、読むのに一体何日かかるのか想像もつかないほどの情報量があり、貴重な情報もとても多いです。
とても価値のある資料を一般人でもあまり無理なく出すことのできる価格で一般書店で手に入れることができる、という点ではとても素晴らしいです。
しかし少し気になるのは、特撮秘宝は東映作品、特に現行放送のものをほとんど扱っていない印象があり、同じ現行放送や新作でも円谷プロの作品は沢山扱っているので、作品にやや偏りがあるという点です。
また、インターネット上での読者参加企画はあるものの、投書の掲載はしていないため、ほとんどの読者は一方的に情報を受け取るだけという構図になります。
そういった点でもやはり、どんな作品でもバランスよく取り上げ、読者も雑誌を作る一員という意識の感じられた昔の宇宙船は素晴らしかったと思います。

今回は20年という区切りで「宇宙船」たったの2冊の比較でしたが、例えば休刊・復刊のタイミング、季刊と隔月刊が切り替わったタイミング、ロゴが変わったタイミング等で比較してみると、また新しいものが見えるはずです。
そもそも「昔の宇宙船」と表現しましたが、具体的に方針が変わりだしたのはいつからか、vol.77のような編集・構成はいつまでされていたものなのかということもまだわかっていません。
このテーマはまだまだ研究のしがいがあります。またバックナンバーを入手したら、少しずつ調べていきたいです。



怪獣オンリーイベント「Attack Of The Kaiju!」に参加します

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前日の告知となってしまいましたが、明日11/5(土)に大田区産業プラザPio2階にて開催されるイベントに参加します。
初めての同人イベント参加です。同人誌を一冊と、今年の大学祭で配布したフリーペーパーを頒布します。



初めての同人誌では、作品考察を書きました。
シン・ゴジラの劇中世界には円谷英二はいない、ゴジラというコンテンツが存在しないという事実に目を向け、それらの不在により連鎖的に消えてしまう文化や、逆に発達している文化など、あの劇中世界の日本が我々の生きているこの世界の日本とどのように違うのか、といったことを考察しています。
もちろん、庵野総監督はそんなこと考えていない、これは別にあの作品を見る上で大事なことではないということを理解した上で、お遊び的にやってみたものです。

更に今回、特別ゲストとして山形在住のとある怪奇小説作家の先生に短編小説のご寄稿をいただきました。
作家さんの正体は諸事情によりここに書くことはできませんが、普段の名義で参加していただいたので本を開けばわかります。おそらく普段怪奇小説を読まない方でも、近年の特撮関連書籍を集めている方でしたらお名前を見たことはあるのではないでしょうか。
こちらの小説は、もちろんシン・ゴジラに関係のある内容なのですが、なんと舞台は100年前の日本です。映画本編にも登場した品川神社にまつわるお話で、一般的な二次創作作品とは違った角度で楽しめる内容になっています。

またイベント自体は「怪獣オンリーイベント」という名目ですが、一般的なイベントとは違い、様々なジャンルのオンリーイベントを「スキマフェスティバル」という一つの会場で同時開催するという形になっています。
私の参加スペースナンバーは【怪獣03】です。ヤシオリ作戦の防護服を着て一人で参加します。
会場は蒲田ですので、ロケ地巡りがてら是非お立ち寄りくださいませ。

Attack Of The Kaiju! 公式サイト
スキマフェスティバル 公式サイト


あと、おそらく残部は出るはずなのでイベント終了後に通販を受け付けます。
会場に来られない方でもし本が欲しい方がいらっしゃいましたら、少しお待たせすることになりますがそちらをご利用ください。

編集に携わった雑誌「文芸ラジオ第3号」が発売されました

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久しぶりの更新は、編集部みんなで一年間コツコツと作り続けてきた本の宣伝です。


今回は団体の広報誌やフリーペーパーではなく、文芸誌というジャンルの雑誌です。
しかも、全国発売です。
「文芸ラジオ」という雑誌の第3号です。
以下、そもそも文芸ラジオとはどんな雑誌なのか、そして私はどこに携わっているのか、どのページがオススメなのか、など書いていきます。


1.文芸ラジオとは

今回で三冊目になる「文芸ラジオ」は、東北芸術工科大学 芸術学部文芸学科の教授と学生が有志メンバーで制作している文芸誌です。
今のところ年に一冊、5月発売というペースで刊行しており、文芸誌なので小説を中心にエッセイや評論といった文章、また著名人へのインタビューなどを中心に載せています。
小説はプロの作家さんは勿論、文芸学科の学生も執筆しています。
毎号だいたい同じくらいのページ数で、今回は全418ページです。

文芸誌という多くの人にはあまり馴染みのないジャンル、小説や文字だらけで418ページも...というと普段あまり小説を読まない人は敷居の高さを感じてしまうかもしれませんが、文芸ラジオにそういった心配はいりません。
より多くの方に手にとってもらえるよう、企画を考えて作っているので、きっと楽しんでいただけるはずです。

編集部では、教授陣と学生スタッフで毎週編集会議を行なっています。どんな特集を組むか、誰に執筆を依頼したいか、などをどんどんアイデアを出して話し合っています。
また作家さんへの依頼、原稿の管理などは学生スタッフが行っていて、学生執筆者の原稿はどういう方向性のストーリーで行くか、どうやったら更に面白くなるかなどといったことを教授を交えて打ち合わせたり...といったような編集者の仕事を責任を持ってやらせていただいています。
他にはインタビューの依頼や実際の取材なども先生方のご指導のもと、学生が行なっています。
私は文芸ラジオには前号の校正と最終確認の段階から参加していますが、企画の段階から本格的に携わったのは今回が初めてなのでとても思い入れがありますし、協力しあって面白い一冊を作ることができたので、多くの方に読んでいただきたいです。 


2.第3号内容解説

・表紙

今回の表紙はモデルの押切もえさん(と、学生スタッフの飼っている猫のサンちゃん)です。
押切さんは小説家としても活動されており、更に山形県にもご縁があるということで表紙になっていただきました。
去年の学校祭では押切さんに大学に来ていただき、作家・押切もえとしてのトークイベントを開きました。そのときの様子をインタビュー形式で載せています。
学祭で押切さんの実物を初めて見た時は、とにかく体が細くて顔が小さくて驚いたことを覚えています。

そして巻頭の押切さんの写真がどれもすごく可愛くて、個人的には超お気に入りのページです。
特に大学のグラウンドを背景に微笑む押切さんの表情がとても良くて、一枚の写真の中で独特な空気感が完成されています。
いくつになっても可愛くて綺麗でいる、って誰にでもできることではないと思うので、すごいなぁと感動してしまいました。

また、学科のブログに編集長の先生が表紙撮影時の裏話を書いているので、こちらも合わせてお読みください。
http://blog.tuad.ac.jp/tuad_bungei/archives/521

・特集「猫というメディア」

更に今回は「猫というメディア」という特集を組んでいます。
単に「猫」ではなく「猫というメディア」というテーマを設定したのは、今や単なるブームとは言えないほど多くの日本人にとって大きな存在となっている"猫"の、メディア性という部分に着目しようという意図があります。
この特集では、漫画「月詠」でネコミミブームを巻き起こした漫画家の有馬啓太郎先生をはじめとするイラストレーター・漫画家の方々による猫イラストや、猫スポットの取材、猫に関する評論や猫小説、猫漫画などあらゆる方向で"猫のメディア性"を取り上げています。
実のところ私は個人的には犬が圧倒的に好きなので、近年の猫ブームにはあまり乗れていないところがあるのですが、この企画はコンセプトがとても面白いですし、猫という存在の偉大さに改めて気づくことができました。

また、この特集は「猫」というとても身近で、親しみやすい存在がテーマです。そして短編小説やエッセイ、評論といった文芸誌のメインコンテンツがバランス良く収録されているので、「文芸ラジオってどんな本なのかわからないからいまいち興味が湧かない」「なんとなく難しそう」と感じている方にもオススメです。

文芸ラジオは今回から漫画を掲載しているのですが、雨下さんの作品「ネコ・ホーダイ」は近未来要素も入れたので後述の22世紀特集もカバーしていると本人が冗談半分で語っていました。



個人的には猫よりも主人公の男の子が可愛くて好きです。 


・特集「僕らのいなくなった世界 〜22世紀を考える〜」

この特集は、今回私がスタッフとして働く上でメインで携わらせていただきました。
タイトルの通り、22世紀という未来がテーマの特集です。インタビューや22世紀をテーマにしたエッセイ、SF短編小説や漫画が掲載されています。
この特集ではインタビューが3本あるのですが、22世紀というテーマでインタビューをするとその人がどんな価値観をもって生きているのか、どんなことを考えているのかといったことがわかり、面白いのではないかということでインタビュー主体の特集となりました。
テーマについての詳しい解説や裏話も含め、公式ブログでの解説がとてもわかりやすいです。
http://blog.tuad.ac.jp/tuad_bungei/archives/523

インタビューは漫画家の米代恭さん、作家の中沢健さん、建築家の竹内昌義さんの三名です。
私は米代恭さん、中沢健さんに取材させていただきました。

米代恭(よねしろきょう)さんは現在、月刊!スピリッツで漫画「あげくの果てのカノン」を連載されています。単行本は現在3巻まで刊行されており、私もお気に入りの作品です。



ものすごく簡単に内容を説明すると、巨大不明生物の襲来が日常となってしまった東京で繰り広げられる、人間関係と恋愛のストーリーです。
個人的にこの作品でとても面白いと感じているポイントは、巨大生物との戦闘で身体を怪我した戦闘員は、腕がなくなっても頭がスッパリ切れてしまっても、「修繕」すればまた元どおりになるという設定です。しかし、「修繕」するたびにほくろなど外側の小さい部分から、食・異性などの"好み"や性格といったその人の内面まで少しずつ変わってしまいます。
この設定によりSF要素と恋愛要素がうまく絡み合っており、「修繕」によってどんどん変わっていく個人をどこまで愛することができるのか、そもそも見た目がその人でも、どんどん変えられてしまうならその人を定義づけるものはどこにあるのか...ということをとても考えさせられます。

また、この作品はよく「不倫×SF」と紹介されることがありますが、私はこの作品の根幹やメインテーマは不倫という行為・関係性ではなく、「個人を定義するものは何か」「変わること・変わらないこと」という人間が個として存在する上での本質を丁寧に描いたものだと解釈しています。
そのため不倫を肯定するような内容や、昼ドラ的に不倫のスリルを楽しむような展開の作品ではありません。
また、紹介文などで主人公が「メンヘラ女子」と表現されることがありますが、主人公の言動は全て「とにかく先輩が好き」という、恋が始まったときからずっと変わらない感情の延長のもと起こっていることで、先輩や奥さんの迷惑になってはいけない、調子に乗ってしまったら自分は罰を受ける...といった描写からもわかるように、最初から自分主体で絶対に先輩を手に入れたい!と考えている訳ではありません。
そのためよく記号的に表現されるようなメンヘラ女子とは違うのではないかと思います。

公式サイトで第一話を無料で読むことができますので、読んだことのない方はこちらも合わせてご覧ください。
→あげくの果てのカノン 公式サイト

「あげくの果てのカノン」が近未来を舞台にしたSF漫画で、22世紀特集の内容とも合うのではないかとの考えで、今回は米代さんに取材をお願いしました。
インタビューでは、社会にコミットできないマイノリティという存在について、またこれからの時代に生きていくために重要なものは何か、社会における女性の立ち位置...など、米代さんの作品でも描かれている「個人」というテーマにとても沿った内容の興味深いお話をたくさん伺うことができました。
また、「ゴジラ」「ガタカ」「逃げ恥」「コンビニ人間」など、誰でも一つくらいは目にしたことがあるのでは?という色々な作品の名前も登場するので、楽しんでお読みいただけると思います。

取材させていただいた感想としては、米代さんはとにかくなんでもすごく考えて考えて自分にとっての答えを見つけていて、何事にも自分なりにしっかりと向き合っている方なんだな、と思いました。こう言ったらむしろ失礼かもしれませんが、好きな作品を描いている方がとても賢くて、しっかり考えて作品を描いているということがわかって嬉しかったです。
一旦取材がひと段落してからも、「さっき○○のくだりについて考えたんですけど...」と改めて意見を話してくださったので、とても濃くて楽しい、実りある時間を過ごすことができました。
また、マイノリティ側の考えや個としての存在、こういった社会であってほしいといった価値観が自分と近い部分があってとても嬉しかったですし、自信にもつながりました。

二人目のインタビュー、中沢健(なかざわたけし)さんについては、当ブログでも過去に記事を二件ほど書いていて、どちらも中沢さんご本人にTwitterで紹介いただいたことがあります。

作家、UMA研究家、歩く雑誌、動く待ち合わせ場所の中沢健さんに感銘を受けた話 - 総天然色日記
きょうドラマ放送開始!小説「初恋芸人」を読んで感じたこと - 総天然色日記



中沢さんは物心ついた時から怪獣が大好きで、近年では円谷プロ作品などで脚本を書かれていたり、UMAやオカルトといった未知の存在にも詳しく、そちらの方面での活動も積極的にされているので、22世紀という未知の時代についての面白いお話も伺えるのではないか...との考えで取材を依頼させていただきました。
そして何より、中沢健さんという見た目も活動も大変面白い方をもっと多くの人に知って欲しいという気持ちがありました。山形という地方にある芸術大学の学生にとって中沢さんのような個性的な方の存在を知ることは刺激になるはずですし、「歩く雑誌」という表現方法を自分で思いついて実行されているという常識にとらわれない考え方、とにかく表現活動を行いたいという姿勢は、クリエイティブな活動を行う上で学ぶものはとても多いと思います。
読者だけではなく、編集部のメンバーにもぜひ知って欲しいと強く思っていたので、企画会議で中沢さんの名前を挙げて採用されたときは嬉しかったです。

中沢さんとは元々、特撮・怪獣好きという趣味のつながりで何度か交流したこともあったのですが、今回は取材という形でお話を伺ったので、趣味の話ではなかなか気づくことのない面白い価値観を沢山知ることができました。

インタビューでは、まず中沢さんは「死というものがなくなって欲しい。生きたい人はずっと生きられる世界になって欲しい」と語っています。
最近肉親を亡くしたばかりの私にとって(取材時はまだ元気だったのですが)、校正時に改めてこの記事を読んでとても考えさせられました。

さらにこのページでは、中沢さんの著書「初恋芸人」「平成特撮世代」の紹介文を書かせていただきました。
米代さんの「あげくの果てのカノン」「おとこのことおんなのこ」の紹介文は文芸ラジオ編集長であり研究者の玉井建也先生が書いているのですが、先生の紹介文はさすがプロの文章で、短い文字数で信じられないほど本質に触れて掘り下げています。
最初はこれと並べられて恥ずかしくない文章なんて書けるわけないだろ...と、実はとてもプレッシャーに感じていてすごく苦しんでいましたが、なんとか書き上げることができました。
「初恋芸人」は人間関係における価値観の部分で、「平成特撮世代」は好きなものへの向き合い方という面でそれぞれ共感できて、ある意味救われたと言っても過言ではない二冊なので、紹介文を書かせていただけてありがたいです。

また、中沢さんのブログでも文芸ラジオを紹介いただいています。ありがとうございます!
25日発売「文芸ラジオ3号」に、中沢健のインタビュー記事が掲載されます。 - 歩く雑誌・月刊中沢健のブログ

「22世紀特集」では他にも小説やエッセイ、漫画など面白い読み物が沢山あります。少しでも近未来やSFなど興味があれば楽しめる特集ですので、ぜひご覧ください。



ゴトウトシキさんの漫画「一億総○○社会」は絵柄がとにかく好きです。


・黒木あるじの怪談教室

このコーナー、実は前号から引き続きで今回は第二弾となっています。
芸工大文芸学科講師であり、怪談小説家の黒木あるじ先生をお招きして怪談を書くコツを座談会形式で教えてくださるという内容です。 

授業で学生が書いた怪奇小説をもとに黒木先生がリライトしたものを一緒に掲載し、それぞれの違いや怖いと感じるポイント、小説としての面白さなどについて先生の解説と共に語り合っています。
今回は「非幽霊」というテーマで、幽霊の登場しない怪談だけを集めて語り合いました。

このコーナーでは私も発言者として参加しています。

似顔絵は「猫というメディア」特集で漫画「ネコ・ホーダイ」を描いた雨下さんに描いていただきました。すごく美人に描いてもらって恐縮です。あとプロフィールのガメラ3以外は武器人間とマタンゴにすればよかったと後で思いました。

ホラー映画や怪奇小説、心霊番組など怖い話が好きな人はもちろん、小説や脚本など面白いシナリオを書いてみたい人、また友達を怖がらせたい人、もしくは怖いものは苦手だけど仕組みを知って克服したい人も楽しめるのではないでしょうか。

・小説

特集内外で今回も沢山小説が載っていますが、この中で私は三本担当しています。
荒川匠「偽りのトニー・バートンと」(特集「22世紀を考える」内)
藤田遥平「邪悪なる眠り」
川村萌華「いろづく白」 

三名とも学科の卒業生もしくは同級生で、執筆時は全員在学中だったので大学内で何度か打ち合わせをしました。どの作品も違ったカラーで楽しかったです。

中でもおすすめなのは藤田遥平さんの作品です。
著者の実体験をもとにした怪奇小説風味のお話ですが、どこまでが実体験なのかはご想像にお任せします。
また、この作品はぜひ「黒木あるじの怪談教室」の後にお読みください。怪奇小説だからというのはもちろんなのですが、真の理由は小説の3行目でわかるはずです。

この作品の特徴の一つは個性的なヒロインの存在ですが、打ち合わせでは主に、このヒロインをどれだけ魅力的に描くかということに力を入れていた記憶があります。
藤田さんはゼミの先輩で、担当教員もゼミの先生だったので本当に楽しくおしゃべりのような感じで打ち合わせをしていました。

「22世紀」特集内でSF小説を書いてくださった荒川さんは、前号に引き続きの担当です。前号では最終確認でしか携われなかったのですが、今回は初稿から担当することができました。
前号掲載の「Carly」も個人的にお気に入りなので、こちらもぜひ。

川村さんは今回が文芸ラジオ初掲載、全国誌デビュー作です。
タイトルの印象通りの柔らかくてあたたかい雰囲気の恋愛小説です。優しい世界観の表現がとても好きです。  

3.まとめ

以上が文芸ラジオ第3号についての紹介と裏話でした。 
他にも評論特集「有川浩対西尾維新」やイベント講演録「創作・人工知能・SF -なぜ『書けないのではない、書かないだけだ』になるのか-」など、面白いコンテンツが盛り沢山です。
人工知能の講演では、機動戦士ガンダムTHE ORIGINの設定考証などをされている作家の高島雄哉さんと、デジタルゲームの人工知能開発者の三宅陽一郎さんをお招きしています。

さらに文芸ラジオでは毎回、新人賞の募集をしています。未発表の小説もしくは評論であればどなたでも応募できます。
今回は第二回新人賞の選評と受賞作を掲載しています。
文章を書くのが好きな方、全国誌デビューしたい方はチャンスなのでこの機会に応募してみてはいかがでしょうか。 

文芸ラジオ第3号は全国の書店と通販サイトで購入できます。

文芸ラジオ 3 - 紀伊國屋書店ウェブストア

文芸ラジオ3号 - amazon

amazonは在庫が切れても数日以内に補充してもらえるので、在庫切れの際は申し訳ありませんが少しだけお待ちください。
もしくはお近くの本屋さんに注文すれば入荷してもらえると思います。 

私は今年で四年生になるので、文芸ラジオに本格的に携わるのは今回が最初で最後ですが、一年間企画を立てたり取材をしたり...とメンバーと協力して本を作り上げたのは忘れられない思い出になりました。 
本当に面白い一冊が完成したのでもっと多くの方に読んでいただきたいですし、今回の売り上げや評判によって次号以降の方向性も変わっていくと思います。
私は来年度以降この編集部から離れてしまいますが、次の代のメンバーにもより面白いものを楽しんで作ってもらってずっと続いてほしいです。
ですので、この記事を読んで気になった方には3号を読んでいただきたいです。
そして、是非感想をSNSやブログに書いてください。 
よろしくお願い致します! 

ジゴワットレポート 東京エンドゲームに行ってきた。

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ものすごーーーく、お久しぶりの投稿です。

まだこのブログの存在、覚えてくれている人いるのかな……。

 

最後の更新のときなんて、まだ就活中の学生でしたね。

今はもう社会人2年目ですよ。最初に入った会社は倒産しました。

 

まぁ、その辺のお話はまたの機会においおいさせていただくとして。

 

タイトルの通り、先日都内にて開催された

『ジゴワットレポート東京エンドゲーム』

というイベントに参加させていただきました。

 

概要を説明させていただくと、

映画、アニメ、特撮のみならず幅広いジャンルの記事を手掛けられているブログ

ジゴワットレポート」管理人の結騎 了さんをゲストにお招きし、

主催の始条 明さんとお二人で主に『アベンジャーズ』と『平成ライダー』、その他好きなものについてひたすら語ろう!というトークイベント。

 

当日の様子については、ご本人のブログをぜひお読みいただければと思います。

 

トークイベント「ジゴワットレポート東京エンドゲーム」出演後記 - ジゴワットレポート

https://www.jigowatt121.com/entry/2019/05/18/232402

 

 

結騎さんのことは当ブログでも何度か紹介させていただいており、

Twitter上でも度々やり取りさせていただいておりますが、

実際にお会いするのは今回が初めてで。

 

今回、参加しようと思ったきっかけとしては、やはり

いつも文章で特撮や映画のことをあんなに面白く解説してくれる結騎さんの生のトーク、絶対に聞きたい!という気持ちがあったのも確かですが、

それ以上に、自分がブログを始めたほぼ唯一と言っていいほどのきっかけとして結騎さんの存在があり、

その後学生時代の活動や、卒業後の進路にまで、決して少なくはない影響を受けた……というのがあり。

今の自分の何割かを確実にかたちづくってくださったきっかけである方に、直接会いたい!お礼の言葉を伝えたい!という気持ちが大きかったです。

 

……とかなんとか言っていたら、今回のことに関して、イベントから約一週間後に結騎さんのほうからまさかまさかの打診をいただき、ジゴワットレポートにて記事にしていただきました。

 

個人のテキストが誰かの人生に影響を与えるということ - ジゴワットレポート

https://www.jigowatt121.com/entry/2019/05/27/215916

 

いや~!!本当に恐縮です。

私からすると、こんな中途半端な一オタクの近況報告の手紙がこんな素敵な記事になって、しかも、読者の方々にポジティブな感想をいただいているなんてことが、あっていいのか……?という感じなのですが。

でも今回、結騎さんに手紙を通してお伝えした事柄、気持ちはすべて本当のことですし、その気持ちを素直に受け取っていただいて、こうしてブログの記事というかたちで、とても丁寧に誠実に返していただいたことが、本当に嬉しいです。

なんだか未だに実感がわきません。

 

(ちなみに、確か前日か当日に「会場では結騎さんへのプレゼントボックスを用意するので、お土産やお手紙がある方はぜひどうぞ!」といったような文言を目にした記憶があり、だから自分は手紙を書いたのですが、後に今回わざわざ手紙を書いてきたヤバいオタクは自分しかいなかったらしいということが判明し、その点でいうと少し恥ずかしかったです)

 

……と、私個人の話はこのあたりにして、今回のイベントについて。

 

今回は言ってしまえば、ある意味では非常にクローズドなイベントで。

主催の始条さんも、ゲストの結騎さんも、特定の作品の製作関係者というわけでもなく、「知っている人はその存在も魅力もじゅうぶんに知っている」という方々ではありますが、

誤解を恐れずに言うと、いち作品ファンであり、ジャンルのファンという点では私たちとは変わらない立ち位置の方々かと思います。

そういった方々に「会いたい!」と思う人がたくさんいて、定員から溢れるほどの申し込みがあり、イベントが成立したという事実がとても面白いし、何よりとてもすごいことだなぁと改めて思いました。

それこそが何というか、とても「Twitterらしさ」とでも言いますか。こういう不思議な繋がりがあっても良いなぁと感じました。

 

結騎さんご本人にもお伝えしましたが、今回の参加を機に、今までだらしなく放置していたブログを立て直すことからはじめ、自分も頑張らないとなという気持ちになりました。

やりたいことを一生懸命やって、楽しいことを増やしていきたい!

……ということで、近日中にブログの再始動を予定しています。

現在、準備を進めている最中です。

 

前から読んでくださっていた方、

最近私を知ってくださった方、いらっしゃると思いますが

楽しみにしていただければと思います。


ブログお引越し&分裂のお知らせ

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前回の記事でもちらっと触れましたが、ブログを再始動します。

それに伴い、gooブログからはてなブログにお引越しし、
さらにnoteのほうも併用しようということになりました。

はてなブログ「新しいブログ(1)」はこちら

おソースのnoteはこちら

サービスを変更することに関しては、特に大きな理由はないのですが……
まぁ、一時期ブログ更新のモチベーションが落ちてしまっていたというのは大きいといえば大きいです。

このブログは学生時代に作って運用していたというのもあり
社会人になったということで新しいブログで心機一転再始動、ということでもいいかなと思い、近年勢いのあるはてなブログへの移行を考えました。

思えば学生時代、暇さえあれば学食でMacBookを開いて一心不乱に記事を書いたり、その過程で多少は培ったノウハウで同人誌を作ったり
そこで文章の楽しさを改めて知り、文芸学科への転科を決意したり
それが現在の仕事につながったり……と、
決して大した規模のブログではないですが、この「総天然色日記」で自分が得たもの、そこにまつわる思い出というのはいくつもあります。

今まで、1記事でも読んでくださった方には全員感謝したいし、
更新を楽しみにしてくださっていた方が一人でもいらっしゃったのか、一人もいなかったのか、それはわかりませんが
しばらく更新が滞っていたことは反省しないとなぁ、と思いました。

それに関しては、「しっかりとした記事を書かなければ」という強迫観念のようなものによって、気軽に記事を書けなくなったというのもあります。

そういうことで、何かしらのレビューだったり真面目なお話などははてなブログのほうで
ツイートの延長のようなつぶやきや小さな日記のようなものはnoteで、というふうに使い分けるというのをしばらくやってみようと思います。

既に、それぞれのアカウントでそれぞれのコンセプトっぽい感じの自己紹介の記事を公開しています。

今後、今までよりはきちんとしたペースで更新していきたいです。

改めて、「総天然色日記」を今まで楽しんでくださったみなさん、ありがとうございました。

まるで大手有名ブログかのような大げさな挨拶になってしまって自分でも困惑していますが……
何人かはお名前やTwitterのアイコンであったり、直接くださった感想も覚えています。
この記事を読んでくださっているかはわかりませんが、ぜひ新しいブログ(1)とnoteのほうも楽しみにしていただければと思います。

はてなブログ「新しいブログ(1)」はこちら

おソースのnoteはこちら

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